行政書士の案件紹介

行政書士事務所を経営していくと、行政書士や他士業との間で案件を紹介したり、されたりということが増えてきます。紹介の案件をメインの集客ルートにしたいと考える人も多くいますので、今回は案件紹介について考えてみます。

紹介のパターン

ひとくちに業務の「紹介」といっても様々なパターンがあります。

最も典型的なのが、専門性の高い業務についての紹介で、行政書士同士、他士業やその他事業者との間で生じるものです。

また、特定の業務についての提携に近い形も一般的です。

例えば許認可取得に伴って会社を設立するときに、信頼関係のある司法書士に設立登記案件を紹介するであったり、税務顧問を探している関与先に税理士を紹介することがあります。

また、士業間でなくても、自動車販売店が車庫証明業務を申請先の警察署の近くで開業している行政書士に依頼するといったものもあります。

さらに、その他にも下請け的に業務を外注したり、新人行政書士に厚意で案件を紹介したりといったこともあります。

紹介を受けられるようになるには

紹介を受けられるかどうかには、人間関係と専門性という2つの要素が大きく影響してきます。

自分が紹介をすることを考えてみるとわかりやすいですが、仲が良いとか人として信用できるといった人間関係があると「あの人に相談してみようか」という気になるでしょうし、専門性の高い業務でやれる行政書士が少なければ、たとえ面識がなかったとしても「あの人に相談してみよう」という気になると思います。

前者に関するアプローチとしては、交流会などが挙げられるでしょうし、後者については業務の専門性を高めると同時にそれを対外的にアピールするなどといったアプローチが考えられます。

自分の経営方針や性格などを考慮して、これら2つのバランスを取りながら営業活動をしているという人が多いのではないでしょうか。

行政書士への案件紹介ルート

行政書士への案件紹介ルートのひとつは、前述の自動車販売店から車庫証明案件を紹介されるであるとか、企業や大学から在留資格(VISA)案件を紹介されるといったような、士業の外からのものです。

もうひとつが同業の行政書士も含んだ士業からの紹介というルートです。

印象値ですが、行政書士に依頼したい案件をもっとも多く持っているのは税理士です

税理士は行政書士登録が可能なので、登録をして自分の事務所で行政書士業務を行っている税理士も多いのですが、顧問料の範囲で対応していたり、専門外の慣れない業務であったりするため割に合わないケースも多く、対応してくれる行政書士を探していることも多いです。

また、税理士の顧客に行政書士業務が発生していることを、税理士自身が気づいていないという状況も往々にしてあります。そのため、行政書士の側から「顧問先でこんな要望があったらお力になれます」といった案内を入れるだけでも、お互いにメリットのある関係を築きやすいのが税理士です。

さらに、司法書士も会社設立登記のあとの許認可申請や在留資格(VISA)案件に対応してくれる行政書士を探しているケースもあり、比較的行政書士への案件紹介が多いようです。

「開業したら税理士事務所と司法書士事務所に挨拶を」というのは、行政書士登録した人なら一度は先輩から聞かされる話かもしれません。

次点で弁護士と社労士、地方で農地転用の業務が発生しやすい場合は土地家屋調査士でしょうか。弁理士や中小企業診断士からの紹介というのは、多くないかもしれません。

紹介案件の注意点

紹介案件は、顧客の獲得コストも低く、経営上の利点も多いため、集客のメインを紹介案件にしていきたいという行政書士は多いのですが、もちろんデメリットや注意点もあります。

断りにくい

紹介案件は、紹介者との人間関係の中で舞い込んでくるものなので、普段であれば受任しないような案件であってもなかなか断りにくいという面があります。

かなり横柄な顧客でも、紹介者の顔を立てる意味もあって強く意見できないまま渋々進める状況も考えられますし、正式な業務に転換する可能性が低そうな相談でも、紹介されたからにはしっかりヒアリングの時間を取らなければならないという状況もありえます。

コミュニケーションの労力

紹介案件では、紹介者が顧客との間に入って業務を進めるケースなど、直接顧客とやり取りできない、やり取りがしにくいことがあります。

このようなケースでは、顧客とのやり取りに時間がかかるうえに、意図が正確に伝わらないことも多く、コミュニケーションに多大な労力がかかってしまいます。

これは顧客の側も同じで、直接に相談できない(しにくい)ことによって、要望が実現するのかしないのか、待たされる時間が延びることでストレス増につながるケースもあります。

割りに合わない報酬額になることも

紹介案件の報酬額は、紹介者と顧客の間の関係性という下駄を履いた状態で商談がスタートするため、比較的高めに設定可能なこともあります。

ただその一方で、紹介者から「安くしてあげて」と頼まれることもあります。特に紹介する側の事務所が、報酬額の安さを売りにしていると、紹介される側で想定している報酬額との間にかなりの隔たりが生じやすくなります。

また、特定少数の紹介者からの紹介案件が行政書士事務所の売上比率の大部分を占めてしまっているようなケースでは、価格交渉力が著しく低下してしまい値切られるといった状況に陥ることもあります。

紹介者に応じた対応が必要

案件を紹介してもらったときに、初回の面談や業務を受任することになったのかどうか、業務を完了したといった最低限のことを紹介者に報告するのは当然ですが(当然ですが、と書きましたが実際にはここが手薄の事務所は比較的多いです)、そこを超えた部分をどうするかというのもやや注意が必要です。

人によっては案件の進捗をこまめに報告して欲しいという人もいますし、逆にあまりこまめに連絡されると煩雑に感じる人もいます。

この辺は好みによる部分が大きいので、紹介案件の相談に入る時点で紹介者に進捗状況の報告をどのタイミングで入れて欲しいか、確認しておくのが無難かもしれません。

外注形式は安定しにくい

これは発注する側の話になりますが、案件が増えて自分の事務所の守備範囲外の業務や、処理しきれない業務が生じてきたときに、従業員を雇用するのは負担が大きいため、他の行政書士に業務の全部もしくは一部を外注したいというタイミングが出てきます。

当然ながら、優秀でしっかりと仕事をやってくれて、時間に余裕があっていつでも対応してくれる人にお願いしたいと考えますから、条件に合う人は「行政書士事務所開業からあまり時間が経っていない優秀な人」の中に多くいるということになります。

しかしそういう人はすぐに自分の仕事も増えていき、対応してもらう余力がなくなります。そもそも優秀かつ自分と相性の良い行政書士と出会える確率というのは、それほど高くありません。

その結果として、行政書士事務所への外注形式での案件紹介というのは、いつまでも安定しないことが多くなってしまいます。

まとめ

行政書士事務所の経営がある程度軌道に乗ってくると、自然と紹介案件は舞い込んでくるようになります。

しかしこの記事で書いたように、紹介案件には自分が新規で取ってくる案件とはまた違った特徴がありますので、誰もが無闇に紹介案件を増やそうとするべきではありません

一般論としては、様々なタイプの顧客や案件に対応することを苦にしない人は、紹介案件の比率が高くても問題ないでしょうし、その逆に案件や顧客は慎重に選びたいという人は、あまり紹介案件の比率を高くしてしまうと負担感が大きくなってしまうでしょう。

行政書士事務所としての経営方針、自身の性格、得手不得手などを総合的に考慮して、売上に占める紹介案件の比率や、紹介案件の中身なども検討しておくのがよいのではないでしょうか。

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