行政書士事務所を開業すると、ほとんどの人が大なり小なりの失敗をすることになるのですが、その中でも多くの行政書士が開業直後に陥りがちな罠の一部の例を紹介してみたいと思います。
行政書士事務所開業の直後に罠にはまった経験から学べることも少なくないので、必ずしも失敗の経験にはマイナス面しかないというわけではありませんが、どのような典型的なパターンがあるのかを知っておくこともまた無駄ではないと思います。
営業電話
行政書士事務所を開業すると、日本行政書士会連合会の名簿に掲載されます。
名簿はインターネット上で公開されていますので、それを見た様々な業者から営業電話がかかってきます。開業直後は仕事の依頼ではなく、十中八九が営業の電話ではないでしょうか。
よく聞くのが、
- 加除式の書籍を買いませんか?
→見た目はカッコいいがほとんど使わない人が多い - 検索エンジンの広告枠を買いませんか?
→集客につながる可能性が低いキーワードを買わされる - ホームページを作りませんか?
→集客できない、更新に費用がかかる、管理費が高い - 有名人と対談しませんか?
→こちらがお金を払わされる - 書籍を出版しませんか?
→自費出版で費用もかなり高い - 公共施設的な場所に看板・広告を出しませんか?
→誰も見ないか、見ても依頼につながらない
といったパターンで、だいたい金額としては数十万円のものが多いようです。
これは多くの方に同意してもらえると思いますが、向こうからアプローチしてきた営業電話で申し込んだサービスというのは、基本的に役に立ちません。役に立たない営業の電話ほど「いまだけの価格です」「他の事務所に枠を取られたらご案内できなくなってしまいます」などと決断を急かして契約を迫ります。
行政書士事務所を開業した直後の数十万円というのは、決して安い金額ではありません。
自分にとってどんなサービスが必要なのか。少し面倒でも自分でしっかりと探して、よく検討することで、このような罠にはまる危険性を低く抑えたいところです。
研修漬け
行政書士事務所を開業してすぐの時期というのは、「毎日仕事で忙しい」という方は少ないと思います。
そして少なからず将来への不安もある中で、研修やセミナーに参加することで不安を紛らわそうとする方も多いです。
もちろん行政書士として開業した以上、勉強は必要不可欠ですし、研修やセミナーに参加して業務の知識や業界の情報を得ること自体は大切なことです。
ですが、業務知識が増えれば自動的に仕事が入るわけではありませんので、勉強するだけではなく、仕事を取るための活動もしなければなりません。
一番良くないのは、研修やセミナーに頻繁に参加して、行政書士同士の繋がりもでき、何となく仕事をしているような気になってしまい、集客のための活動がおろそかになってしまうことです。
研修や懇親会で気の合う仲間を見つけて、業務の依頼が無いことの確認を取り合って安心する状態が、一番まずいです。
大切なのは、その時々でどのような活動が、行政書士事務所経営のために必要なのか、優先順位はどうなのかということを考えながら過ごすことだと思います。
書籍など資料の収集
「あの業務も依頼されるかもしれない」「この業務も行政書士の王道だから押さえておきたい」など、勉強熱心な方ほど開業前後から書籍や資料の収集に励むことが多いと思います。
業務経験に乏しいため、自信の無さから延々と書籍を購入してしまう罠も待ち構えています。
しかし、専門書はそれなりの値段しますから、あれもこれもと用心して開業費用を書籍代に回しすぎると、キャッシュ不足で後日、事務所の経営が厳しくなってしまう可能性があります。
キャッシュが不足してしまうほど、怪しい誘いや本来なら受任しないであろうおかしな依頼にも手を出してしまう危険が高くなります。
ある程度の知識を得たら「あとは具体的な話があったら揃えよう」くらいに割り切って、手元の資金を残しておくことも大事です。いざというとき頼りになるのは、極論してしまえば「お金」であることも多いものです。
まとめ
失敗してみないとわからないことも沢山ありますので、冒頭で触れたとおり、様々なチャレンジをして「経験する」ということも大切です。
しかし、行政書士として開業して事業主になった以上は、商売に関することは自己責任ですので、罠にはまるも避けるもそれは自分次第です。
行政書士事務所の開業直後にどのような罠に陥りがちなのか知っておくこと、心構えを持っておくことも、また大切ではないでしょうか。