『経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事』
出版社：日本能率協会マネジメントセンター
著者：藤田耕司（企画執筆協力：石下貴大）
AIの利用が広がるにつれ、多くの士業が「定型的で単純な手続き業務はＡＩに取って代わられかねない」と危機感を強めています。
起業して新事業を始めたり、いち早くAIを取り入れたりするなど、業務の見直しに取り組む動きも出始めている一方で、「人間にしかできない仕事」としてコンサルティングを志向する動きが出てきています。
士業の専門知識に加え、経営参謀としての能力を備えれば、AIとの共存共栄は十分に可能です。
本書は、「経営参謀」を育てるプロによる、AI時代に食える士業であり続けるためのバイブルとして持っておくべき1冊です。
https://pub.jmam.co.jp/book/b472500.html
阪本コメント
行政書士業務のうち、書類をお客様の代わりに書くだけの代書業務は、AIやITの進歩で今後自動化されると言われており、行政書士も書類作成業務からコンサルティング業務を伸ばさないと生き残れないと言われています。
とはいえ、そのコンサルティングをどのような手法で、どのようなマインドで行っていくのが近道なのかは、業界内でもあまり議論されていないと思います。
本書では、士業の強みを生かして経営参謀として活躍するための具体的な方法として「質問力」「共感力」について触れられています。質問力と共感力を発揮することで、お客様の課題を見える化するのが、経営参謀になるための一丁目一番地なのではないでしょうか。
そういう私は、本書を読んでから、質問内容や質問方法に工夫をするようになりました。
泉谷コメント
本書は実際に読んでみると、AIの話は導入に過ぎず、士業としてお客様とどのような関わり方をしていくべきなのかということに主眼が置かれていることがわかります。
行政書士という仕事についても、「単に手続きを代行するだけではなく、コンサルタントたれ」ということが言われはじめて久しいです。
この点については賛否様々な意見があるところですが、本書には、「行政書士として自分の仕事をどう定義していくのか」という問題を考えるためのヒントが随所に散りばめられていますので、AIにあまり興味のない方にも得られるものがあるのではないでしょうか。
岩本コメント
「これからは激動の時代」といったイメージが喧伝されることも多いですが、地球、太陽、そしておそらく宇宙さえも、始まりから終わりへと常に変化しつづける、そんな世界に住む私たちにとって、むしろ現在進行形の変化こそ常態であると言えるのかもしれません。
士業という法律・制度上の枠がある以上、その枠内で環境変化に応じての研鑽が求められますが、そもそも、士業という仕組みさえ一昔前には存在せず、これから永劫続くわけでもありません。
知識・技術の研鑽は、ともすれば視野狭窄に陥りやすく、時代に取り残されないためにと続けてきた行為そのものが、ふと気づけば周囲から取り残される要因となる怖さもあります。
士業という一つの事業を運び営んでいくためには、時に専門的に、時に一般的に、視野をバランス良く使い分けていく柔軟な姿勢が常に問われることになるでしょう。
士業は他のサービス業と比べて情緒的価値の提供がおろそかになりがちです。だからこそ情緒的価値の提供を強く意識することで大きな強みにつながります。
P159
ウェブの制作に携わらせていただく機会が多い私としては、この文は常日頃感じていることで、まさに文字通りの実感を持って読むことができました。
他のサービスと比較して、士業という業界は「依頼者の目的」を見過ぎて「依頼者自身」を見ていないことが多いように思います。仕事は、常に「人と人」の間で発生する。特に士業界隈では、この意識がより大事になってくるのではないでしょうか。
