行政書士になろうと考えたときに、「どうやって実務を学べばよいのかわからない」という人も多いのではないでしょうか。行政書士が実務を学ぶ方法にはどのようなものがあるのか、代表的なものを確認しておきましょう。
行政書士事務所に勤務する
一般的なイメージでまず思いつくのが、どこかの行政書士事務所に勤務して、そこで仕事をしながら実務を習得していくということではないでしょうか。
実際に業務を行いながら学べるので、実務習得の方法としては優れています。
行政書士事務所の求人は常に少ない
行政書士事務所に勤務することで、実務以外にも同業・他士業とのネットワーク作りや、集客方法を習得することができます。
ただし、行政書士の世界では求人の数自体が、最近少しずつ増えてきたとは言っても非常に少なく、その中で自分が取り組みたい分野を取り扱っている行政書士事務所に入所するのは簡単ではありません。
いざ試験に合格しても、「全く経験が無い仕事を突然始めるのは不安だ」と思われるかもしれません。しかし多くの行政書士は、行政書士事務所勤務の経験なく即開業しています。
行政書士事務所の勤務後に開業を目指す際の注意
なお、勤務後に独立して行政書士事務所を開業しようと思っている人は、辞め方にも注意が必要です。
それぞれの行政書士事務所は、自らの事務所のために雇用をし、給料を支払い、必要な教育をします。つまり、新人行政書士を育てて独立させるためにやっているわけではないということです。
もちろん最終的には独立という目的のために、実務を覚えたくて勤務したとしても、独立の際に禍根を残さないよう上手く立ち回るのも、1人の事業者として必要なスキルかもしれません。
行政書士業界は狭い業界です。行政書士事務所に勤務後に独立をする際は、不義理がないに越したことはありません。
研修(セミナー)
次に思いつくのが行政書士向けの実務研修でしょうか。
都道府県の行政書士会や各支部が主催しているものから、行政書士や他士業が講師を務めるものなど、様々なテーマについて開催されています。
行政書士が主催しているものだと、弊社役員も講師を務めている「行政書士の学校」などが有名です。
また、資格予備校が流れのまま、試験合格後の実務についてもセミナーを開催してフォローしているケースもあります。
このページで紹介している、行政書士事務所に勤務したり業務を受任しながら実務を習得していく方法をとる場合でも、その前提として実務セミナーをいくつか受けてみるのもイメージ作りにはよいかもしれません。
研修に参加する際の注意点については、「開業直後の行政書士が陥りがちな罠」でも少し触れています。
同業者に教えてもらう
研修とも似ていますが、個人的に同業者から教えてもらうケースもあります。
単に教えてもらうというよりは、業務を共同受任したり、案件を紹介する形で業務をお願いしたうえで、お客様とのコミュニケーションの取り方や提出書類を見せてもらうなどといった形が多いのではないでしょうか。
なお、同業者から教えてもらう場合の注意点をひとつ紹介しておきます。
行政書士事務所を開業して間もない人の中には、「先輩行政書士は後輩行政書士に無償で仕事を教えて当たり前」と思っている人が一定数いるという話を耳にすることがあります。
懇親会で先輩行政書士にノウハウを教えてくれと言い、断られたら「ケチですね」と発言し、周りからたしなめられている現場を見たこともあります。この手のエピソードは意外と多いです。
当事者同士が納得していれば外野がとやかく言うことではないかもしれませんが、業務に関する専門知識を教えてもらうということは、相手が先輩であろうが後輩であろうが同期であろうが、その人がお金と時間を使って得たノウハウを教えてもらうということです。
そこで誠意ある態度が見せられなければ、どう巡って自分の不利益となって返ってくるかわかりません。知らない業務を受任しそうになると、切羽詰まってつい自分のことで手一杯になりがちですが、そんなときこそ相手に敬意を持って接するということも大切です。
行政の担当者に確認しながら自力で覚える
おそらく一番多いと思われるのが、自分で条文や手引を読み込んで、申請窓口に問い合わせながら覚えていくというパターンです。
実際このやり方を繰り返して仕事を覚えたという行政書士は少なくありません。
役所が受理した申請に問題があるケースが怖い
ただ、このやり方だと「申請は通るには通るが、実は問題のある申請だった」というようなケースに気づく機会がほとんどないという状況に陥ることがあります。
それなりに業歴のある人でも、専門分野が同じ人と話してはじめて自分のやり方の問題に気づくということもあります。
規模の小さな業務から受任する仕組み作り
また、行政書士の業務は比較的小さな規模のものから、相当規模の大きなものまで多種多様です。
顧客から依頼を受けて、窓口に確認を取りながら実務経験を積むケースでは、できるだけ規模の小さな(短期に終わる、許可要件が少なく行政の裁量が狭い)業務から受任できるように、集客ルートの構築を検討しておくのも一つの手です。
「本人でも申請できるけど、手間がかかるから行政書士にお願いしよう」
上のようなタイプの業務から受任することで、申請までのやり取りや役所での応対、業務受任までの流れを習得しやすくなります。
顧客に迷惑をかけない
どの方法を採るにしても、行政書士という専門家として報酬をもらって仕事をする以上は、「顧客に迷惑をかけない」というのは最低条件です。
国家資格者として開業する以上、言い訳は一切できない
「新人だから」とか「やったことないから」というのは顧客に対する言い訳には一切なりません。
まず第一に考えるべきは、「専門家として業務を完遂すること」だということは忘れないようにしましょう。
他の行政書士の紹介も視野に入れておく
特に開業当初は、なんとかして実務を習得したいこと、開業資金が日に日に減っていくことから、難しそうな案件でも「まずは受任」と考えてしまいがちです。
しかし、受任して問題なく申請が完了すれば結果オーライとはいえ、途中で要件を満たさないことが判明したり、申請後に顧客の要望とは異なる許可を取得してしまうと、顧客・行政書士ともに非常に大きな損失を受けてしまいます。
自身の手に余る業務の依頼が来たときは、それを専門としている行政書士を紹介したり、状況によっては顧客に事情を説明して断る(もちろん、受任して途中で断るのではなく受任せず断るという意味です)ことも、頭の片隅に置いておいた方がよいでしょう。