元&現役行政書士であるGenomosメンバーが座談会形式で語るGenomos座談会の第2回は、行政書士開業前後にオススメの一冊について語ってみようと思います。
座談会参加メンバー
Genomos代表、士業向けウェブ制作会社風デザイン株式会社代表。元行政書士。
Genomos経営コンサルティング担当。行政書士法人シグマ代表社員。
Genomos所属。行政書士法人シグマ代表社員。
さて、今回は行政書士事務所の開業前後にオススメの一冊ということで、それぞれ一冊だけオススメの本を紹介していこうと思います。
良い本はたくさんあると思いますが、あえてここは一冊だけでお願いします。
まずは個人的に興味があるんですが、岩本さんどうですか?
え、一冊だけの縛りがあるんですか?それは難しい。
私は行政書士業務の中でも許認可に絞って仕事をしていましたが、依頼してもらいやすさ、仕事の進めやすさ、他士業さんとの連携のしやすさ、すべてにおいて潤滑油のように効いてきたのが会社法……を前提とする商業登記法の知識だったんですよね。
これ、もしかするとGenomosのコラムで以前にも少し触れたかもしれませんし、初っぱなから妙な方向に話が振れるかもしれませんが。
行政書士試験にも商法は含まれていますが、会社法についてはそれほど理解していなくても合格できちゃうじゃないですか。でも実務においては会社法と商業登記法の知識が確立されているほど、単なる書類作成代行業務に留まらない企業に対する支援が行いやすくなるので、許認可業務を軸に据えるには必須かなと。
もちろん、商業登記自体は司法書士さんの業務なので、自分で登記手続きを進めるとかは一切ありませんでしたが、許認可の前提としての商業登記、許可取得してからの商業登記、って流れは頻繁なので、知識がないと全体像が見えない。
ということで、開業前後の行政書士さんに一冊オススメするなら、会社法の知識がそこそこあることを前提としての『司法書士受験生向けの商業登記法テキスト』ですね。私は開業して2年後くらいに知識を仕入れましたが、できれば行政書士試験から続けて習得してしまうほうが無駄がなさそう。
おーなるほど。
私は司法書士試験の勉強もしていて商業登記法も一通りは勉強してたので意外と盲点でした。
まあ司法書士試験の勉強してたと言っても、午前中で不合格を確信して昼休みに帰っちゃうようなレベルでしたが(笑)。
阪本さんに至っては司法書士試験の勉強もしてた上に、司法書士法人での勤務経験もあるから、ここはあまり意識してなかったのでは?
全く意識していませんでした。
私は司法書士試験は7回受験しましたし、司法書士の試験科目では会社法と商業登記法が得意科目でしたし、司法書士法人では補助者として商業登記をゴリゴリやっていたので・・・。
でも、許認可法務に従事するなら、商業登記のルールを知っている・知っていないでは、許認可申請準備中の段取り力や、司法書士さんとの連携の際に差が出ると思いますよ。
そういう、泉谷さんのお勧めの本は何ですか?
ちょっとベタなんですけど、マイケル・E・ガーバーの『はじめの一歩を踏み出そう』ですかね。
開業して少し経ったときに酒販専門行政書士の石井さんから紹介されたんですが、これを読んで「行政書士事務所開業したってことは商売はじめたってことなんだな」っていうところが明確になった気がします。
自分もなんとなく試験勉強の延長で来てしまっていたんですけど、士業の人って割と「職人として腕が良ければやっていける」って思ってる人が多いじゃないですか。
もちろん腕も大事だけど経営の部分も大切だよねというのは早い段階で気付けると、その後の展開がだいぶ違うかなと。
そういった経営の意識ってお2人ははじめから強く持ってました?
私は全く持っていませんでした。給与を支払ってもらえる従業員としての思考から、経営者・個人事業主としての思考に切り替わるまでには、確かにある程度の日数やら意識改革が必要でした。
特に先行投資的なお金の使い方ですね。
給与所得者であれば毎月決まった金額でどうやり繰りすればよいのかという、どちらかといえば支出をいかにカットしていくかという思考が求められますが、行政書士事務所を早期に軌道に乗せていくためには「支出することで収入を増やす」「支出を減らすよりも収入を増やす」という、お金の流れを作る思考が強く求められるなと感じました。
今振り返ると、私も経営の意識は薄かったです。ホームページ作りながら士業や経営者の交流会に参加していれば、売上が立って、事務所の銀行口座の額が増えるものだと甘く考えていましたね(笑)。
行政書士法人勤務時代には案件が途切れなくあったので、受任前の工程をかなり甘く考えておりました・・・。
そういえば、この座談会のテーマは、行政書士事務所開業前後のオススメの本についてでしたよね。ここで私のオススメの一冊をねじ込みますね。
いまはおそらく新品では買えないと思うのですが、丸山学先生の『10年間稼ぎ続ける行政書士の新成功ルール』です。
この本を知ったのは、行政書士試験に合格して間もない頃、司法書士事務所を退職して行政書士への転身を考え始めた時に、現在もシグマの建設業・宅建業・産廃業務をお願いしているローイット行政書士事務所の加藤さんからの紹介でした。「差別化」について学ばせて頂きました。
10年前くらい前の行政書士開業本としては定番でしたよね。
とか言いつつ読んだことが無いんですが、その頃読んだ「差別化」って、どんな感じでいまに繋がってますか?
いまの専門特化の道に入るきっかけという感じですか?
さすがですね。図星です。専門特化の道は、丸山先生のこの本がきっかけですね。
事務所のブランディングにもこだわっているのも、実はこの本の影響を大きく受けています。商業出版したり、商標登録したり、細かいところでは、セミナーの開催形式を自社主催ではなく他社主催にこだわっているあたりとか。
影響大ですね。
岩本さんは丸山さんの本は読んだことありますか?
阪本さんの紹介された本は、私も別の行政書士さんから薦められて読みました。丸山さんの本を参考に事務所の方針を定めた行政書士さんは多そうですね。
ホームページ制作のご相談で地方に行くと、ちょっとした雑談の際に「そういえば、いま丸山さんはどうされているんでしょうね?」といった話題が出ることもあるので、影響力の強さを感じるところです。
もっとも、私と丸山さんの間には「関東圏に住んでいる」という超大雑把な共通点しかなく(笑)、直接お会いしたことすらありませんので回答のしようがないのですが。
やっぱり凄い影響力あるんですね。
ということで一冊縛りということで話してきましたが、そうは言ってもこれも紹介しておきたいという本があれば、サラッと紹介してもらおうと思いますが、お2人何かありますか?
Genomos的な話題でいうと、行政書士として開業する際にホームページを作るなら『ザ・マイクロコピー』は参考になるかと思います。ウェブからコンスタントに受任できるホームページを組み上げる場合、もちろん些事に拘泥するのは本末転倒なのですが、小さな要素の積み重ねが他事務所との差別化として大きく機能してくるので。最近だと『UXライティングの教科書 ユーザーの心をひきつけるマイクロコピーの書き方』が同系統の本かな。
あと、このメンバーで書籍の話題となると、お二方の携わられた『行政書士のためのマーケティングギア』も、最近開業される方には指針となる一冊なのかなと、一応触れておきましょうか(笑)。あんな面倒そうな内容を、よくまとめたものだなと思いました。
開業のために読むというよりも、開業して少し経ってから読むほうが、業際問題などはより鮮明に浮き立ちそうですけどね。
マーケティングギアに触れて頂きましてありがとうございます!
派手さはありませんが、コツコツと売れておりまして、改訂版は2回増刷されています。この本を執筆する時、実務に追われていて全く筆が進みませんでした。脱稿2週間前に、すべての業務の受任を止めて執筆に全集中した記憶が蘇りました。
世間的には私の著書のようなイメージが強いようですが、私が執筆したのは一部であり、シグマメンバーの共著であることをこの場ではアピールしたいです。
むしろ私は阪本さんの単著だという情報を広めようかと最近企んでいるんですが(笑)
マーケティングギアは、「これが行政書士のマーケティングだ!ドーン!」みたいな本ではなくて、「行政書士のマーケティング考えるならこういうこと知っておくといいんじゃないですか」って本なので、地味は地味ですよね。
「こうやったら成功する!」っていう感じの情報を求めてる人には物足りないかもしれません。
それと岩本さんが紹介してくれた『ザ・マイクロコピー』は私も読みました。岩本さんから教えてもらったような気もしますが(笑)。
私からは、私と同様に会社員など社会人経験を経ずに開業した人へのオススメの本として、『コンサル一年目が学ぶこと』を最後に挙げておきたいと思います。
阪本さんは他に紹介しておきたいオススメの本はありませんか?
そうですね。決算書の読み方系の本は、何かしら読んでおくと良いと思います。
特に許認可業務をやられる行政書士さんは、決算書に書かれている意味がわからないと、お客様や行政機関とのコミュニケーションに支障が出ますからね。
同感です。決算書が読めないと許認可は辛い……。
それ系だと『【新版】財務3表一体理解法』もオススメです。
というわけで我々3人のオススメの本について話してみましたが、いい具合にバラけて面白かったですね。
皆さんそれぞれお気に入りの本があると思いますので、ジェノモスの公式Twitterにリプいただけたら、そこから選んだ本を3人で読んで書籍紹介したいですね。
(座談会第3回に続く)