行政書士事務所を経営していくためには必ず仕事が必要になりますので、集客の方法というのは最も重要な経営課題のひとつです。
行政書士事務所ごとに集客の方法は千差万別ですが、典型的なものについて、あらためて確認してみたいと思います。
行政書士のウェブ営業
まずはGenomos(ジェノモス)の専門領域である、ウェブを使った行政書士事務所の営業について確認していきましょう。
ホームページ+PPC広告
最も即効性があるのが、ホームページを作ってリスティング広告などのPPC広告(検索結果の上部などに表示され、クリックされた回数で課金される広告)を出す方法です。
もちろん通常は広告の内容を検証しながら反応率を高める過程を経て、適切な予算で問い合わせが入るようになります。そのため「出せばすぐ集客できる」と言えるものではありませんが、集客の可能性という意味では最も即効性があります。
広告予算については、資金繰り、集客したい業務、どのくらい集客したいのかなどに応じてということになりますが、個人事務所であれば1ヶ月あたり数万円のレベルで十分なことも多いのではないでしょうか。
ホームページ+自然検索
行政書士事務所でホームページを活用していくなら、自然検索(上で触れた有料の広告ではない、一般的な検索)からの集客も目指していきたいところです。ある程度軌道に乗ってしまえば、少ない労力と予算で集客できるのがなによりの魅力です。
ただ、自然検索を狙ったウェブの営業というのは、一方で軌道に乗るまでに時間がかかるという難点があります。
他の記事でも繰り返し言及していますが、適切な方向性の記事追加などを継続的に行ったとしても、軌道に乗るまでに1年程度は必要になると覚悟しておくほうがよいでしょう。
文字で見ると簡単なように思えるかもしれませんが、実際にやってみるとホームページを育てることは記事追加だけでもなかなか大変な作業です。
「リアルな営業だから大変、ホームページ営業だから楽」とは限りません。
メールマガジン、ステップメール
メールマガジンやステップメールは、直接的な集客というよりも、見込み顧客との接触頻度を維持する方法として有効なケースが多いです。
メールマガジンは、定期的な配信コンテンツ作成が必要で、継続するにはホームページの記事追加と同様、それなりの労力が必要です。
先に内容を決めてしまい、設定した日数ごとに自動配信してくれるステップメールという仕組みを使えば、配信する内容を一度決めてしまった後は基本的にはあまり手をかけなくて良いという利点があります。
逆にステップメールは決まった回数で終わりますので、配信ペースや回数には検討を要します。
ホームページよりも一見して分かりにくい集客手段であるため、全く取り入れない行政書士事務所も多いですが、実はメールマガジンやステップメールを上手に取り入れている事務所では想像以上の集客ツールとして効果を発揮していることがあります。
なお、メールマガジンやステップメールは、特定電子メール法の規制対象になりますので、その点には注意を要します。
また、名刺交換した人にメールマガジンを配信しようという人もいると思いますが、同意を得ず一方的にメールマガジンを送る行為について、あまり良く思わない人も多いということは理解しておくほうがよいでしょう。
SNS
SNSについては「行政書士のSNS活用について」でも詳しく紹介していますが、集客面で考えると、ターゲットを設定して、どうやってそこに情報を発信して届けていくかを考えて運用するということがポイントになります。
行政書士の場合、SNSで直接に顧客とつながって集客というのはかなり難しく、大抵の場合、同業や他士業と知り合いになることを通じて、紹介で仕事が入ってくる仕組み作りに利用することになるでしょう。
動画
行政書士の中でも最近増えてきているのが、動画を撮影してYouTube上で公開する営業方法です。
動画を上手に活用できれば、行政書士や事務所の知名度を上げることができますし、SNSやホームページと組み合わせることで相乗効果を図ることができるでしょう。
とはいえ、現状では比較的見られているものでもチャンネル登録者数が数千人規模で、行政書士や行政書士試験受験生をメインターゲットにしているものが多い状況です。上で触れたSNS同様、Youtubeも直接的な集客に繋がるケースはまだ珍しいというのが現実でしょう。
どちらかといえば、Youtubeはチャンネル登録者を増やして直接の閲覧者を増やす使い方よりも、ホームページ内にはめ込む動画として利用する使い方のほうが、行政書士の業務や集客との相性は良いのではないでしょうか。
動画は撮影や編集といった手間もかかりますし、そもそも動画で行政書士としての魅力を伝えられなければ意味がありません。取り組む場合には、目的や目標を明確にしておくことが大切です。
行政書士のアナログ営業
次に、行政書士のアナログ営業について確認していきます。
ウェブ営業に比べて初期投資や準備期間が少なくて済むものが多いため、開業直後はアナログ営業を中心にする人が多い印象です。
飛び込み営業、テレアポ
「営業」と言えば、飛び込みとテレアポを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
最近では携帯電話が普及したこともあってか、あまりテレアポをしている人の話を聞くことは少ないですが、飛び込み営業はけっこうやっている行政書士も多い印象です。
飛び込み営業は意外と時間を費やすので、特に1人事務所の場合にはエリアや営業先を絞って効率的に行わないと、他のことをやる時間がなくなってしまうため要注意です。
DM、ポスティング
DM(ダイレクトメール)やポスティングも、比較的多くの行政書士が取り組む営業活動です。
ただ、想定よりも反応までに時間がかかることも多く、広告を打ってから数ヶ月後に問い合わせが来るということもあるため、その辺りを見誤ると資金繰りが厳しくなってしまう恐れも。
DMについては、事務所を設置した地域(およびその隣接地域)のみに絞ってDMを発送している行政書士もいれば、事務所を設置した都道府県のうち、人口の多い市区を対象に比較的広範に発送している行政書士もいます。
自然検索を狙ったホームページ集客もそうですが、DMやポスティングも「どれだけ続けられたか」という継続性が大事な集客手段です。
セミナー
見込み顧客向けにセミナーを開催し、そこから業務の集客を目指す行政書士も多いです。
ただ、開業直後でノウハウが無い状態だとセミナーの内容が薄くなりがちだったり、質問されても回答があやふやになったり、セミナー自体の集客に苦戦することも多いため、セミナーを使った集客を継続できる人は少ない印象です。
業務の知識や経験が一定以上蓄積された段階で、セミナーを用いた営業活動を取り入れてみるのもよいのではないでしょうか。
紹介
ネットワークの中で、紹介案件を振ってもらえるような活動をする行政書士も多いです。
とはいえ、あまりにもはじめから「仕事ください!」という姿勢が前面に出てしまうと、なかなか仲良くなるのも難しいですし、そういった姿勢の人に仕事を振りたいとは思わないのが人情です。
矛盾するようですが、まずは自分の力で集客ができるようになってはじめて専門家として信頼してもらえ、紹介案件を振ってもらえる頻度も高くなります。
ネットワーク作りについては「行政書士のネットワーク作り」でも詳しく書いています。
まとめ
行政書士にとって集客と実務のどちらが大事かということは幾度となく話題に挙がっています。もちろんどちらも大切なのは当然なのですが、1件も業務をしたことがなければ、行政書士として仕事をしているとは言えません。
行政書士事務所を開業してまったく仕事がないのに、来たるべき依頼に備えてひたすら実務の勉強ばかりして営業活動をほとんどしない、という人をけっこう見ます。
行政書士になる人は、資格試験を通過するぶん勉強には慣れているので、実務の勉強は取り組みやすいというのもあるのかもしれません。
しかし、仕事がないうちは実務の勉強よりも集客にやや重点を置くよう意識するほうが、行政書士事務所の経営が軌道に乗りやすいのではないでしょうか。