Q. 行政書士です。ホームページを開設しようと思っているのですが、その業務で成功している他の行政書士のページを参考にした方が良いのではないかと考えているのですが、参考にして似せた方がいいのでしょうか?
A.そのホームページの意図がわからず真似ても自事務所の方針とマッチせず上手くいかないケースも多いので、表に見えている部分だけ似せるのはデメリットが多いです。
ホームページ制作に携わる私たち(ジェノモス)の側は、「この分野はこの事務所がWEBからご依頼を多く得ているようなので、似た感じのホームページを作りたい」というお話は定期的にご相談の話題として挙がります。
しかし、ホームページというのは「見た目がご依頼につながる一番の要因」というわけではありません。
他事務所のホームページを参考にした場合の問題
いわゆる「ウェブ集客」に成功している行政書士事務所のホームページに似せて作っても、そのホームページが上手く稼働しない典型的な例を5つご紹介します。
1.大手感のあるホームページと自分の事務所の規模が合わない
よく起こりがちなミスマッチとして一番に挙げたいのは、上手くいっている(と思われる)他事務所のホームページが大手事務所の雰囲気を醸し出すものである場合です。
自分の事務所が一人事務所(または行政書士+補助者1名)など小規模である場合、大手感のあるホームページを見て「こういう風に立派なものを作らないと依頼が入ってこないのか」と真似てしまうと、さまざまなミスマッチが起こりやすくなります。
すぐ想起できるのは、もし直接の相談のアポイントがとれて相談者が事務所に訪問するという場面で、ホームページは大手の雰囲気だったのに実際は小規模事務所だったことによる違和感や不信感などですが、それ以外にも大手感を出してしまうと様々な問題に派生しやすいので注意を要します(次の2や3の例も、大手感を出すことで生じやすくなります)
2.参考にするホームページがコーポレートサイト
WEBから直接に相談・受任につなげる場合、いわゆる事務所の紹介・案内を中心とするコーポレートサイトではなく、ある業務・分野に特化して情報発信等を行う業務特化型のホームページを育てていくことが近道になります。
ですが、「この事務所が成功しているので参考にしてホームページを作りたい」という場合、そのホームページは業務特化型ではなくコーポレートサイトのことが多く、そのデザインや内容を参考に作っても直接の相談・受任に至るまでにはかなりの労力・日数を要することになってしまいます。
3.複数のスタッフがいることが前提の作り
これは上の2の例とも関連しますが、WEBで成功している(と思われる)事務所のホームページの作りは、小規模な行政書士事務所の運営とは非常にマッチしない構成になっているケースもよくあります。
従業員・スタッフの多い事務所は、ホームページから電話やメールの反応が無いよりはあったほうがよい、スタッフを遊ばせておくよりは電話やメールの対応を行ってもらい、その中から(100件に1件でも)受任につながるものをすくい上げられればよいとの考えでホームページを運用されていることも多いです。
そのホームページを個人規模の行政書士事務所が真似て作っても、「相談の電話ばかりかかってきて対応が大変」「WEBからの相談は受任に至る可能性が低い」といった感想や結論につながり、結果として「ホームページを作っても意味なかった」と諦めてしまいます。
4.見えないところが本体
ホームページを一見したところでは綺麗なデザインと主要なページが十数ページあるだけに見えても、実はそこからリンクでは繋がっていない部分に大量のページを公開しているという構造のホームページがあります。
これを「WEB集客に成功しているらしい」とうわべだけ、トップページから目につくところだけ真似て作っても、実は本体はそこではないためご相談やご依頼にはつながらないというケース。
ホームページの運用に慣れていない行政書士さんは、このタイプの勘違いにはまってしまいやすいので要注意です。
5.ホームページの作りが古い
「この事務所はホームページから集客が上手くいっている」といって参考にするホームページが、ほとんど10年以上前に公開したままというケースです。
この場合、そのデザインや構成を真似ても、10年前の古い作りのホームページをわざわざ作るだけの話になり、WEBから直接の受任にはつなげにくくなってしまいます。
そのホームページが成功しているのは、10年以上前に公開してその当時のSEO的な施策が上手くいって上位表示されているなどの理由が大きく、それを10年以上後追いで真似してもメリットがほとんどありません。
6.そもそも依頼者の決め手がWEBではない
これは2番目や5番目の例と関連しますが、「この事務所はホームページからの集客に成功している」と思われる(同業からもそんな噂がよく聞こえる)事務所が、実際のところはホームページではない部分で集客に成功しているケースというのは往々にしてあります。
ホームページ以外の媒体で先に事務所を認知してもらったり、既存客が別の人に事務所を紹介するなどした後、最後の確認としてホームページを見てもらって受任に至るようなルートが形成されている場合、最後はホームページから相談・受任につながっているため端からみると「WEBから集客している」ように見えますが、それは窓口として機能しているだけであり、実質的な集客手段ではありません。
ホームページの見た目ではなく意図を参考にする
上で挙げたように、成功している(ように思われる)事務所のホームページを参考にして問題が生じやすいのは「そのホームページの見た目」を参考にするケースです。
後ろにある意図がわからず見た目だけ真似ても、実質的なところを掬いそこねているため、そのホームページは上手く機能しません。
もしご質問のように「その業務で成功している他の行政書士のページを参考に」するのであれば、パッと見のデザインや雰囲気などではなく、そのデザインや構成をとっている意図・理由のほうが本体であり重要な要素となります。
いわゆるウェブ集客がまだ軌道に乗っていない段階で、それらの意図を理解して自分のホームページに取り入れるのは難しいかもしれませんが、「行政書士として何をアピールすればよいのか」という視点から「行政書士の顧客は何を求めているのか」という視点にシフトできるかどうかが大きな鍵です。