Q. 行政書士です。ホームページの記事を書いているのですが、実務経験が少ないこともあり、手引や条文を参照しているせいか、どうしても手引きのような文章になってしまいます。これではあまり読みやすい記事にならないような気がするのですが、どうすれば読みやすい記事を書くことができますか?
A. 文章の中に相談者や依頼人といった、「何かに困っている人」「何かを知りたい人」「何かに不安を感じている人」の目線をいれるように心がけましょう。
「手引きのような文章」から脱却するには?
行政書士としてホームページやブログの記事を書く際、「手引きのような文章になってしまう」という悩みを抱える方は少なくありません。これは、法令や制度について正確に伝えようとするあまり、条文やマニュアルをそのままなぞるような内容になりがちだからです。
また、自分(行政書士)に向けた文章になってしまっているのも大きな原因です。
しかし、こうした文章は情報量が多い反面、専門用語が多く難解で、読み手にとっては堅苦しく感じられることがあります。
そもそも、ホームページやブログの記事を読む人の多くは、「何かに困っている人」や「専門家の意見を知りたいと思っている人」です。
こうした読者にとって、単なる情報の羅列や形式的な表現では、解決したい悩みや疑問にしっかり応えているとは感じられません。結果として、記事を読んでも途中で離脱してしまう可能性が高まります。
そこで重要なのが、「依頼人目線」を意識した文章を書くことです。
依頼人がどのような場面で不安を感じ、どのような解決策を求めているのかを考え、それに応える形で文章を構成することで、読者にとって親しみやすく、役立つ記事になります。
つまり、「読みやすい文章」を目指す第一歩は、「何を伝えるか」だけでなく、「どう伝えるか」を意識することです。そのためには、以下のポイントを押さえると良いでしょう:
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難しい専門用語を避ける
専門用語や法的表現は最低限に抑え、わかりやすい言葉で説明しましょう。どうしても必要な場合は、具体例や日常的な言葉で補足します。 -
読者が抱える課題を想定する
「どんな場面でこの情報が必要になるのか?」を考え、その課題に寄り添った形で記事を構成します。 -
感情を意識した語り口
「こんな不安を感じていませんか?」といった問いかけや、読者の気持ちを代弁する表現を入れると、記事に親近感が生まれます。
依頼人目線を取り入れるメリットとは?
ホームページやブログの記事を「手引きのような文章」から脱却させ、依頼人目線を取り入れることで、得られるメリットは大きく3つあります。
読者に共感を与え、信頼感を生む
行政書士のホームページに訪れる人の多くは、専門知識がない状態で「不安」や「疑問」を抱えています。そのため、単に制度や法律を説明するだけでなく、「あなたの気持ちを理解しています」という姿勢を見せることが重要です。
たとえば、次のような導入部分の違いを比べてみてください:
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手引き風の文章:
「建設業許可の取得には、一定の経営経験や財務基準が求められます。」 -
依頼人目線を意識した文章:
「建設業許可を取得したいけれど、経営経験や財務要件が足りているか不安ではありませんか? この記事では、わかりやすく必要条件を解説します。」
後者のほうが、読者の気持ちに寄り添っていると感じるのではないでしょうか。読者も「自分の疑問に答えてくれる」と感じやすくなるでしょう。この共感の積み重ねが信頼感を生み、「この行政書士なら安心して依頼できそう」と思ってもらえるようになります。
難しい内容でも伝わりやすくなる
専門家としては、正確な情報を伝えたいという気持ちが強くなるものですが、読者にとっては「わかりやすいこと」が何よりも大切です。依頼人目線を取り入れると、文章に自然と読者が理解しやすい工夫が加わります。
たとえば、「届出義務」という言葉を説明する際、専門的な表現をそのまま使うのではなく、こうした工夫が考えられます:
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専門的な説明だけの場合:
「特定の変更が生じた場合、届出義務が発生します。」 -
読者目線を意識した説明:
「特定の変更が生じたときには、事前または事後に役所へ申請を行う必要があります。これを『届出義務』と呼びます。」
このように、専門用語をわかりやすく言い換えるだけで、記事が親しみやすくなり、読者の理解も深まります。
読者とのコミュニケーションがスムーズになる
記事を依頼人目線で書くことで、読者が気軽に相談しやすい雰囲気を作ることができます。
「困ったときにこの人に相談しよう」と思ってもらえるようになると、価格以外の面で選んでもらいやすくなります。
依頼人目線を取り入れることで、記事の価値が大きく向上するだけでなく、読者との心理的な距離も縮められます。
依頼人の目線を意識した文章の書き方
依頼人目線を意識するためには、具体的な方法や工夫を文章に反映する必要があります。ただ「相手の立場に立つ」と言われても、具体的にどうすれば良いのかわからない場合が多いでしょう。ここでは、実践的なテクニックを紹介します。
問題提起から始める
依頼人が抱える課題や不安を文章の冒頭で提示することで、読者は「自分のことだ」と感じ、記事を読み進めやすくなります。
例:
- 手引き風の書き出し:
「建設業許可申請では、以下の必要書類の準備が重要です。」 - 依頼人目線の書き出し:
「建設業許可を申請するために、何を準備すればいいのかわからず困っていませんか? 手引を読んでも細かいことが多く書いてあり、専門用語も多くてわかりにくいので、わかりやすく説明します。」
「不安」を提示し、それに対する解決策が記事で得られると予感させることで、読者の興味を引きつけます。
専門用語を平易な言葉で説明する
行政書士の仕事は法的な内容が多いため、どうしても専門用語を使わざるを得ない場面があります。こうした専門用語をそのまま使うのではなく、日常的な表現に言い換えることで、読者にとって理解しやすい文章になります。
例:
- 専門用語のみの場合:
「許可を取得するためには、欠格事由に該当しないことが必要です。」 - 読者目線を意識した場合:
「許可を取得するためには、欠格事由に該当しないことが必要です。欠格事由といっても馴染みのない言葉かもしれませんが、~~~という意味です。」
このように言葉の意味を補足することで、依頼人にとって文章が親しみやすくなります。
具体例や事例を使って説得力を高める
文章が抽象的だと、読者にとって内容がイメージしづらくなります。そこで、過去の事例や具体例を挙げることで、内容を具体化し、読者に「自分のケースにも当てはまるかも」と思わせる工夫をします。
例:
「たとえば、過去に建設業許可を取得したお客様は、必要書類の準備に戸惑っていました。しかし、私たちがサポートした結果、スムーズに許可を取得することができました。」
具体例を示すことで、読者は自分の状況に重ねやすくなり、記事への信頼感が増します。
適切な見出しで読者の興味を引く
記事を読みやすくするためには、見出しも重要です。特に、「読者が知りたいポイント」を見出しで強調することで、読者は自分に必要な部分を見つけやすくなります。
例:
- 抽象的な見出し:
「必要な書類について」 - 読者目線の見出し:
「建設業許可を取るために必ず準備するべき書類とは?」
前者では一体何に「必要な書類」なのかが判然とせず、SEO上も良いとは言えません。
根拠条文を書かない
手引のような記事でよく目にするのが、「建設業法○○条で△△と定められています」といったように、根拠条文を挙げているケースです。
行政書士のウェブサイトを読みに来る人にとって、根拠条文は本当に必要な情報でしょうか?「こう書いてあるけど、何法の何条に書いてあるんだろう」と思う人はほとんどいないのではないでしょうか。判例の名前や通達の名前なども同様です。
こういった点も依頼者目線、読者目線で記事を書くときには注意しましょう。
実際の例で学ぶ!読みやすい記事の改善ポイント
依頼人目線を意識した文章を書くには、具体例を見ながら実践的な改善方法を学ぶのが効果的です。ここでは、よくある「手引き風」の文章を依頼人目線で親しみやすい文章に変えるポイントを解説します。
Before/After:手引き風の文章を読みやすく改善
例:建設業許可の必要条件に関する文章
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Before(手引き風の文章)
「建設業許可を取得するためには、経営業務管理責任者としての経験が5年以上必要です。また、財務基準を満たすことが求められます。」 -
After(依頼人目線を取り入れた文章)
「建設業許可を取得したいと思っていても、『自分に経営経験が足りているのか不安』と感じていませんか? 実は、建設業許可では、過去に経営業務管理責任者として5年以上の経験があることが必要です。また、財務基準も確認されるため、資本金や決算書類の内容をチェックする必要があります。この記事では、それぞれの条件をクリアする方法を具体的に解説します。」
改善ポイント:
- 読者の不安を具体的に取り上げる:「経営経験が足りているか不安」という読者の気持ちに寄り添う。
- 問題提起と解決策をセットで提示:「どうすれば条件をクリアできるのか」を伝える予告を入れる。
- 柔らかい語り口:「不安に感じていませんか?」という問いかけで親しみやすさを演出。
読者が共感できる導入部分の工夫
記事全体の印象を左右する導入部分では、読者が抱える課題や背景を想像し、それを代弁するような表現を使いましょう。
Before(手引き風の導入)
「一般建設業許可取得には複数の書類が必要であり、都道府県知事への申請が求められます。」
After(共感を引き出す導入)
「初めて建設業許可を取得しようとすると、『何から手をつければいいのかわからない』と不安になる方が多いです。特に、必要書類や手続きの流れを把握していないと、申請がスムーズに進まないこともあります。このページでは、建設業許可取得に必要な書類や流れをわかりやすく解説します。」
改善ポイント:
- 読者が感じるであろう不安や疑問を代弁する
- 解決策が記事に書かれていることを明示し、読む価値を提示する
「困っている人」に寄り添う文章の練習方法
読みやすい記事を書くには、普段から読者目線を意識するトレーニングも役立ちます。以下の練習方法を試してみてください:
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架空の依頼人を設定する
「建設業許可を取りたいが、どんな書類が必要かわからないAさん」といった具体的な人物像を設定し、その人に向けて話しかけるような形で文章を書く。 -
よくある質問を参考にする
実務でよく受ける質問をもとに記事を書くことで、読者の関心事に直接応える内容になります。 -
文章を読み返すときは第三者の目線で
「この文章は専門知識がない人にとって理解しやすいだろうか?」と考えながら校正を行いましょう。
具体例を元に依頼人目線の文章を書くコツがつかめると、記事全体がぐっと読みやすくなります。次の見出しでは、実務経験が少なくても信頼感を高める文章術をお伝えします。
実務経験が浅くても信頼される記事を書く方法
「実務経験が浅い自分が書いた記事で信頼してもらえるだろうか?」と不安に感じる方も多いでしょう。
しかし、経験の有無だけが信頼につながるわけではありません。読者の不安や疑問に寄り添い、的確な情報をわかりやすく伝えることで、信頼を得ることは十分可能です。ここでは、実務経験が少ない行政書士でも信頼される記事を書く方法を具体的に解説します。
読者にとっての「具体的な価値」を提供する
単に情報を列挙するだけではなく、「その情報が読者にとってどう役立つのか」を明確に伝えることで、信頼感が増します。たとえば、手続きの注意点やよくある失敗例などを具体的に挙げると、読者にとって実用的な記事になります。
例:付加価値を伝える書き方
- 「申請書の記載ミスで審査が遅れるケースが多いですが、◯◯の欄は特に注意が必要です。」
- 「実際に申請書を作成する際には、このフォーマットを参考にするとスムーズです。」
読者が「この記事を読んでメリットがあった」と感じれば信頼につながります。
共感と誠実さを伝える文章を書く
読者は専門家の知識だけでなく、その人の人柄にも信頼を寄せます。「真摯に取り組んでいる」という姿勢を見せることで、親しみやすさと信頼感を同時に得られます。
例:誠実さを伝える表現
- 「私自身、これまで多くのケーススタディを学び、最新の情報を日々アップデートしています。」
- 「この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。さらに詳しいことが知りたい方は、どうぞお気軽にご相談ください。」
全力で読者に寄り添う姿勢を示すことが大切です。
本筋からはそれますが、「どうぞお気軽にご相談ください。」的な問い合わせのハードルを下げる方向の文言を増やしすぎると、依頼する気のない聞きたいだけの問い合わせが増えることにも注意しましょう。
小さな成功体験を積み重ねる
実務経験が少ない場合でも、記事を通じて小さな成功体験を重ねることが可能です。たとえば、以下のような形でフィードバックを得ることができます:
- 「この記事を読んで申請がスムーズにいきました!」という読者からの声
- SNSやブログコメントでの質問や感謝のメッセージ
- 自分の記事がきっかけで相談につながった実績
これらの経験を記事に反映することで、少しずつ説得力のある内容に進化させていくことができます。
行政書士が心がけるべき「読みやすい文章」の心得
読みやすい文章を書くことは、単なる情報提供を超えて、読者の信頼を獲得し、相談につなげる重要なスキルです。しかし、行政書士としての記事は、法令や手続きといった専門的な内容が多いため、どうしても堅苦しくなりがちです。
ここでは、「読みやすさ」を重視した文章を書くために心がけるべきポイントをまとめました。
読者の悩みや疑問に寄り添う
行政書士の記事を読む読者は、多くの場合「困りごと」や「不安」を抱えています。そのため、文章全体を通じて「あなたの悩みを解決したい」という姿勢を示すことが重要です。
心得ポイント:
- 読者の気持ちを想像し、「こんなことで困っていませんか?」と問いかける
- 悩みに共感し、記事の中で解決策を明確に提示する
読者が「自分のための記事だ」と感じられる文章を意識しましょう。
情報はわかりやすくシンプルに伝える
専門知識を持たない読者にとっては、法令や手続きの説明は難解に感じられることがあります。情報をシンプルに整理し、必要以上に難しい表現を使わないことを心がけましょう。
心得ポイント:
- 専門用語はできるだけ避け、日常的な言葉で言い換える
- 長文になりそうな場合は、箇条書きで要点を整理する
- 具体例を挙げて内容をイメージしやすくする
親しみやすい語り口を心がける
堅苦しい文体ではなく、読者に直接語りかけるような文章にすると、親近感を感じてもらえます。「あなた」「私たち」といった主語を積極的に使い、対話的な表現を取り入れましょう。
心得ポイント:
- 「〜すべきです」よりも「〜してみませんか?」と提案型の表現にする
- 丁寧さを保ちながらも、適度にカジュアルな語り口を意識する
- 専門家として一方的に教えるのではなく、共に解決する姿勢を見せる
読み手を迷わせない構成を作る
読みやすい記事は、内容が論理的に整理されており、読者が迷わずに目的の情報にたどり着けるものです。構成を整えることで、情報の伝わりやすさが大きく向上します。
心得ポイント:
- 明確な見出しを使い、記事の構造をわかりやすくする
- 1つの段落で1つのテーマに絞る
- 読者が次に読むべき場所を自然に誘導する流れを作る
読者に次のアクションを促す
記事のゴールは、読者の疑問を解決するだけでなく、次の行動を促すことです。記事の最後には、読者が具体的に何をすれば良いかを提案しましょう。
心得ポイント:
- 「この記事を読んでわからない点があれば、こちらのページをご参照ください。」
- 「手続きに不安がある方は、当事務所がサポートしますのでご依頼ください。」
- 連絡先や問い合わせ方法を明記する
定期的に文章を見直す
「読みやすい文章」を維持するには、定期的な見直しが欠かせません。文章を改善し続けることで、読者目線の質を高められます。
心得ポイント:
- 読者のフィードバックを受けて内容を更新する
- 自分の文章を第三者の視点で読み返す
- 他の行政書士の記事や一般的な読みやすいブログから学ぶ
まとめ:読者に寄り添う姿勢が何よりも大切
「読みやすい文章」を書くための最大の心得は、「読者を思いやる気持ち」です。専門知識をひけらかすのではなく、困っている人の手助けをするつもりで書けば、自然と親しみやすい、信頼される文章になります。