行政書士として独立・開業する際に直面する悩みのひとつが、「ウェブサイトをどう作るか」という問題です。事務所を紹介する総合的な“コーポレートサイト”を先に作るべきなのか、それとも主力業務に特化した“集客用サイト”を先に作るべきなのか――。
多くの開業準備中・直後の方がこの問いに迷います。しかし、ウェブからの集客を目指すのであれば、明確な判断軸を持っておきたいところです。
優先すべきは「検索流入に時間がかかるサイト」
結論から言えば、Googleなど検索エンジンからの流入を前提とするサイトを、優先的に構築すべきです。
なぜなら、検索経由でアクセスを得るには、ウェブサイトを公開してから一定の時間がかかるためです。検索エンジンにインデックスされ、上位表示され、実際に検索ユーザーの目に触れるようになるまでには、想像以上に長い“助走期間”が必要となります。
この助走期間を少しでも早くスタートさせることが、後々の集客効率に大きく関わってきます。
検索経由で仕事につながるまで、半年~1年は想定しておきたい
よくあるご質問に「検索エンジンから仕事に結びつくようなアクセスが来るまで、どのくらいかかりますか?」というものがあります。
これは非常に重要な問いですが、実は一概には答えられません。というのも、以下のような複数の要因が絡むためです。
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サイトのコンテンツの質・量
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記事の更新頻度と継続性
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競合サイトの数と強さ(SEO上の競争)
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対象となる業務ジャンルの検索ニーズの大きさ
とはいえ、最近の傾向としては検索経由で安定的なアクセスが得られるようになるまでに、短くても半年、長ければ1年以上かかるケースが珍しくありません。
「作っただけ」では集客にはつながらない
ここで注意したいのが、「とりあえずサイトを作っておけば、半年後には勝手に集客してくれる」というわけではない、という点です。
公開後の半年〜1年は、”育てる期間”と考えるべきです。具体的には、
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見込み客のニーズに応える新しい記事を継続的に追加
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情報の最新性を保つための更新作業
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ユーザーにとって使いやすい導線設計の見直し
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サイト全体の専門性や信頼性を高める工夫
こうした地道な取り組みを重ねることで、検索エンジンからの評価も高まり、見つけてもらえるサイトへと育っていきます。
行政書士のホームページは開業前からの準備がオススメ
前述のとおり、ウェブサイトは公開した直後からすぐに成果が出るわけではなく、一定のアクセスが集まり始めるまでに半年以上かかるケースが一般的です。
そのため、開業してからサイト作成をスタートすると、実際に受注に至るまでに大きな“空白期間”が生まれてしまう可能性があります。
これを防ぐためにも、事業計画がある程度固まった段階からウェブサイトの準備を始めるのがおすすめです。
あらかじめ仕込んでおくことで、開業後の受注開始までの期間を短縮でき、スムーズなスタートダッシュが可能になります。
建設業許可など競合の多いウェブサイトは手間・日数が必要
特に、建設業許可など、競合サイトが多い人気分野を取り扱う場合は要注意です。
こうしたジャンルでは、検索上位に表示されるまでに相応の時間と労力が必要になるため、できるだけ早くウェブサイトを公開し、記事の追加を開始しておくことが重要です。
効果的な制作順の考え方
ポイントは、“競合”と“目的”に応じて制作の順番を工夫することです。
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競合が多い業務に特化したサイト(建設業許可、VISA申請など)
→ 検索経由での集客を狙うなら、最優先で着手 -
事務所の概要やプロフィールを紹介するコーポレートサイト
→ パンフレット的な性格が強いため、後回しでもOK
このように、成果が出るまで時間のかかるサイトから優先的に準備することで、無駄なく効率的なウェブ集客体制を整えることができます。
検索を意識しないのであれば即稼働できる
検索エンジンからの流入をあまり想定しないウェブサイト――たとえば、
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事務所紹介のためのコーポレートサイト
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縦長の1ページで完結するLP(ランディングページ)型のサイト
といったタイプは、公開直後からでも機能させることが可能です。
リアルな営業活動で名刺交換をした相手への案内先として活用したり、リスティング広告(PPC広告)など検索以外の導線をメインにするのであれば、立ち上げてすぐに効果を発揮する可能性のあるこれらのウェブサイトを検討するのもよいかもしれません。
行政書士にとって、事務所サイトは本当に必要か
少し本題から外れますが、事務所紹介サイト(いわゆる「事務所のホームページ」)は、そもそも必要なのかどうか、あらためて検討することも重要です。
「独立・開業するなら、それらしいサイトが欲しい」
「行政書士のホームページといえば、事務所の紹介ページでは?」
というイメージから、見栄えの良い事務所サイトを最初に作るという方も少なくありません。確かに、きちんと整ったウェブサイトがあると、開業の実感が湧き、安心感も得られます。
しかしながら、このような事務所紹介型のサイトが、WEBで直接的な集客につながるケースは少ないのが現実です。
そのため、ホームページ制作における優先順位としては、事務所サイトは後回しにすることも検討する必要のあるタイプだといえるでしょう。
コストを割いて事務所サイトを制作する場合は特に注意
ご自身でサイトを作れる方や、無料のサービスを利用して制作するのであれば別ですが、それなりの費用をかけてウェブサイト制作業者に発注しようと考えているようでしたら、その予算を集客用の業務特化サイトなどにかけた場合とどちらがプラスになるか、しっかりと検討することをオススメします。
「見栄えの良いホームページ = 集客できるホームページ」とは限りません。
この点を押さえておくと、行政書士の開業直後にありがちな“なんとなく作って満足”というホームページ制作の落とし穴を避けることができます。