『士業はマーケティングが9割』
出版社:日本法令
著者:斎藤 竜
課題に対して課題解決型へと大きく変わってきています。また、同業者が同じような商品・サービスを提供しつつある今、クライアントが「誰に相談するのか」といった“個”を意識した士業マーケティングが求められます。本書では、士業・専門家が下請業務から抜け出して、高単価でコンサルティングする方法や、士業に向けたマーケティング戦略、利益が出る事務所経営、そして、事務所のデジタル化の方法など、筆者が実際に取り組んで効果があったものだけを抽出して紹介しています。
https://www.horei.co.jp/iec/products/view/2750.html
阪本コメント
一部の書評では「内容が古典的でガッカリ」と評価されている方もいらっしゃるようですが、私はそのようには感じませんでした。
行政書士事務所のマーケティング戦略の原理原則が、具体例を織り交ぜながらわかりやすく記されている一冊だと感じました。これから開業される方は営業活動の準備の場面で、すでに開業されている行政書士さんには営業活動のPDCAサイクルの中でC(チェック)とA(アクション)の場面で本書は有益だと考えます。
WEBやDMで認知→問合せ→個別相談→受任
紹介者が関与しない一般的な行政書士事務所の受任ルートはこの流れです。WEBやDMを活用した営業活動はセミナーで手法を学ぶことができますが、個別相談の対応方法について学ぶ機会は少ないでしょう。
第5章の『受任率が格段に上がる個別相談の受け方』は個人的に多くの気づきがありました。代表行政書士が対応するときはその手法が、スタッフに対応させるときは育成の秘訣が記されています。
個別相談で行うべきことは、クライアントの信用を得ることです。
P173 第5章 受任率が格段に上がる個別相談の受け方 Ⅰクライアントから「お願いします」と言われるための個別相談のポイント
私が所属している行政書士法人は私もスタッフも話好き多いので、個別相談の際は、「話しすぎるな・傾聴大切に」を意識しています。実務経験を重ねて業務に自信がつくと、知識・経験をお客様に一方的に話したくなる気持ちはわからなくはないのですが、それではお客様の信用を得ることは難しいのです。
士業は自分の提供する知識やノウハウが商品・サービスなので、個別相談では全力で解決方法をすべて伝えがちです。
P174 第5章 受任率が格段に上がる個別相談の受け方 Ⅰクライアントから「お願いします」と言われるための個別相談のポイント
有料相談であればこのパッションは褒められるのですが、受任前の無料相談でそれをやってしまうのは、事務所経営の観点からはズレているのです。
その理由やどのような姿勢で個別相談を受ければよいのかが、本書には記されています。
泉谷コメント
挑発的なタイトルの本書ですが、内容を読んでみると基本的なマーケティングのお話が、具体例を中心に紹介されています。
内容としては、著者の経験に基づいて、著者自身が成功したマーケティングの手法を紹介するものなので、それぞれの手法自体には賛否が当然あると思います。
しかし、こういった書籍はすべて丸ごと鵜呑みにするのではなく、自身の課題解決に役立ちそうな部分だけ参考すればよいと考えていますので、そういった使い方をする際には多くの人に何かしらヒントになることがあるのではないでしょうか。
司法書士の方が書いているから行政書士には参考にならないと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、行政書士事務所経営にも十分活用できる内容ですので、これから事務所を開業する方や、事務所経営を見直すヒントを探している方に向いていると思います。
岩本コメント
本書では、下請業務から抜け出して川上に立ち、筆者が自ら取り組んできた高単価でコンサルティングする方法、士業の先生方に向けたマーケティング戦略、利益が出る事務所経営、そして、事務所のデジタル化の方法についてお伝えしています。
P iv はじめに
私がWebサイト制作に携わらせていただく際、司法書士さんがよく口にされるのが「手続きの最後、登記だけ下請のように細かな案件を大量に処理するフローを変えたい。Webサイトを活用することで、手続きの川上からコンサルティングも含めて案件に携わりたい」というものです。
引用にもあるとおり、本書では士業事務所としての業務への携わり方を方向転換して、川上から案件に関与していくための様々な方法が紹介されています。どちらかといえば王道的な手法が多いのかもしれませんが、自分の事務所にいま足りない方法、実践しているものの中途半端な状態に陥っている方法を、withコロナ的な環境変化も踏まえ、あらためて見つめ直して活用していくための指針になります。
士業事務所においては「しっかり業務に取り組んでいれば、良さは自然と伝わる(はず)」という寡黙で職人気質的な考えも強く、サービス内容や事務所の特徴に関する「見える化」の作業が不足しているケースは多いです。
実際に思いついた案は口頭で伝えるだけでなく、目に見える形で伝えることがポイントです。
P48 第2章 何のサービスを提供するのか
P48では主に提案書についての話題として「見える化」に触れられていますが、業務を受任するために、また受任した業務を円滑に進めて顧客満足度を向上させるためにも、見える化は機能しやすい改善要素ではないでしょうか。