Q.行政書士事務所を開業予定で、ホームページからの集客に取り組みたいと考えています。ホームページは自分で作った方がいいのでしょうか?それともホームページ制作業者に外注した方がいいのでしょうか?ホームページ制作業者の選び方も合わせて教えてください。
A.自分で作るとホームページやウェブについていろいろなことが見えてくるので、まずは自作してみるのもよいと思います。
行政書士として開業するにあたっては、ホームページを作って公開しようと思われる人が大半ではないでしょうか。最近は何かしらのホームページを公開することが、行政書士事務所を運営していく上で必須ともいえる状況となっています。
ホームページから集客を図ろうとする人はもちろん、リアル営業から紹介での集客を考える人でも、紹介する際にホームページが無いと他士業さんや同業の行政書士さんとの連携がスムーズにとれないケースも出てくるためです。
行政書士のホームページを自作する意味
さて、ご質問いただいた「行政書士事務所のホームページを自作するか外注するか」という問題ですが、これはもちろん、いろいろな要素や置かれている状況によって変わりますが、時間に多少でも余裕があるなら一度は自作してみることをおすすめします。
というのも、一度自作してホームページやウェブの全体像についてある程度具体的に考えられるようになっておくほうがホームページの運用が楽になること、また後日、ホームページを制作業者に任せる場合でも打ち合わせで出てくる用語がよくわからなかったり、何を重点的に考えればよいのか判断しにくい事態を回避できるためです。
独自ドメインを取得する、レンタルサーバーを借りる、WordPressを導入する、電話番号の記載やお問い合わせフォームの設置を行う、そして場合によっては検索広告の出稿なども検討することによって、どんな仕組みでホームページが組み上がり、稼働するのかイメージをつかむことができます。
そうなれば、後日もしホームページを制作業者に依頼しようと思ったとき、制作業者から「独自ドメインは何にしますか?」とか「広告と自然検索、どちらでアクセスを増やす予定ですか?」「どの程度のエリアからの集客を検討されていますか?」といった質問があった場合でも、より具体的なイメージを思い浮かべながら打ち合わせを進められます。
ホームページを自作する場合に便利なサービス
「まずはホームページを自作してみよう」と思い立っても、未経験の人がHTMLやCSSをゼロから学んでハンドメイド(?)で構築していくのは手間がかかります。
近年は綺麗な見栄えのホームページを簡単に構築できるサービスも多く提供されていますので、まずはそういったサービスのいずれかを使ってホームページを作成・公開するのもよいでしょう。
JimdoやStudioなどを使われる行政書士さんも多いです。
こういったホームページを簡単に構築・公開できるサービスを利用する場合、独自ドメイン(○○.comなど)を別に取得して、それを使うようにしておくとメリットが大きいです。
逆に独自ドメインを自分で取得していないと、もし後日にホームページを別の方法で構築・移行することになった場合、URLが変わってしまい、それまでにウェブ上に浸透した情報を引き継げなかったり、パンフレットや名刺にURLを記載している場合はそれらの修正・再印刷も必要になったり、デメリットが多く発生するためです。
独自ドメインは、ムームードメインやお名前ドットコムで取得・維持管理されている行政書士さんが多いようです。ドメインは通常、年間1,500円〜5,000円程度しかコストがかかりませんので、ホームページを作ろうとなったら、まずはサクッと取得してしまいましょう。
ホームページの修正過程でHTMLやCSSを少し学んでみよう
ホームページを簡単に構築・公開できるサービスを利用する場合でも、細部を変更したり、見栄えを自分のイメージに近づくように調整する場面では、HTMLやCSSの知識があると便利です。
ホームページをゼロから構築するためにHTMLやCSSを学ぶことは、時間や手間がかかりすぎて(不要な範囲の知識まで学習することになるため)おすすめできません。が、既に構築・公開して運用が始まっているホームページの一部を変更・調整するためにHTMLやCSSの知識を身につけるのであれば、具体的な箇所を必要な範囲で学習していくことになるため、無駄が少なく、後日に役立つことも多いのでおすすめです。
HTMLもCSSも、初見では意味のわからない記号や数字の羅列に見えてしまうかもしれませんが、比較的簡単なルールで一定の効果を得られる構造になっています。概要だけでも把握しておくと、ホームページの運用はグッと楽になります。
ホームページを自作する行政書士を待つ陥穽
ホームページを自作して運営を始めると、一部の行政書士さんは「ホームページを自分でいじるのは時間や手間がかかる、この作業は制作業者に外注してしまおう」と思われるかもしれませんが、逆に「ホームページをいじるのって、こんなに面白いんだ」とはまってしまう行政書士さんも出てきます。
ところで、ホームページって何のために公開したのでしょうか?
冒頭のご質問にもあったように、本来は「ホームページからの集客に取り組みたい」からですよね。
ホームページから行政書士業務のご依頼を得るためにホームページに手間暇をかけていたはずが、しだいに「もっと綺麗にしたい」「もっと自分好みにしたい」と、本来の目的とは違った方向(依頼者のためではなく自分のため)に変わってしまう危険があるのは、ホームページを自作する際の落とし穴なので意識して注意するほうがよいでしょう。
綺麗なホームページを作りたいだけなら、綺麗なホームページを安価に制作してくれる業者さんに外注してしまうほうが簡単です。
行政書士ホームページにおける制作業者の選び方
制作業者さんの話題が出たところで、ご質問の後半でいただいた「ホームページ制作業者の選び方も合わせて教えてください」について。
制作業者さんの選び方についてはいろいろなポイントがあるので詳細は別記事であらためて取り上げることにしますが、まずは以下のような点に注意してみてください。
- メールや電話、飛び込み営業での勧誘に即決しないこと
- 維持管理契約を解除した場合でもホームページが残ること
- 行政書士ではなく行政書士の顧客を主眼に置いて制作してくれること
→行政書士が好む色をヒアリングしても業務受任には近づきません - 月額契約の場合は総額が高額にならないこと
→解約した場合に総額いくらかかるかも事前に確認すること - 自分で記事の追加・修正が可能な仕組みを導入してくれること
- 「開業資金が尽きそう」というタイミングで相談しないこと
これからホームページを制作しようとする行政書士さんであれば、状況的に一番気をつけなければならないのは最初に記載した「メールや電話、飛び込み営業での勧誘に即決しないこと」です。
営業トークに乗せられるのではなく自ら比較検討を
「ホームページくらい作らないと集客は難しいのかな」などと思い始めた時期に「いまどきホームページを持っていないと依頼に繋がりませんよ」と思っていた内容でタイミングよく営業された上、「弊社ではこの地域の行政書士さんは2名までしか対応できません、1名は決まってしまったので残り枠は1名のみです」「今月だけキャンペーン価格で対応できます」「お目にかかって○○さん(行政書士)がとてもよい先生だと感じましたので、ぜひこの地域の人にもっと知ってもらえるよう上司にかけあって安価な料金での対応を了承させました!」といった時限の圧力を加えられると、つい「どうせそろそろ作らなきゃと思っていたところだし」と即決してしまいがちです。
急かすということは、考える暇を与えるとマズいという心理の裏返しです。
そして、たいていの場合はそこに「営業さんも良い人そうだし」といった謎の後押し要素が加わって、制作を依頼することになります。
それ全部、営業トークにホイホイと載せられているだけですよ。「毎月○○円のコストなんて、月1件受任できれば簡単に支払えますよ」「経営者はここぞというときに大きく投資できないと、いつまでたっても事業を維持拡大できませんよ」といったパターンも、よくあるトークです。
営業を受けたら、そして営業さんが良い人であればあるほど!期間を設けて他業者とも比較するなど、しっかり検討してください。
ホームページに早い段階から取り組むことが大事
最後に挙げた「開業資金が尽きそうだから、ホームページを作って挽回しよう!」という考えは、悪い制作業者にひっかかりやすくなるだけでなく、そもそも一般的な制作業者に依頼した場合でもホームページを育てる期間が設けられないため、失敗(最悪の場合は資金枯渇による事務所廃業)につながりやすいです。
ホームページが無駄な投資にならないように、早い段階からよく検討(自作するならツールなどを比較、外注するなら業者やサービスを比較)して、できるだけ早期から取り組んでおきましょう。