行政書士がホームページを作るときには、大企業のような綺麗で大手感のあるホームページにしたいと思う方も多いのですが、本当にそのようなホームページを作るべきなのでしょうか。
綺麗なホームページは集客に有効?
行政書士事務所のホームページを綺麗で高級感のあるデザインで作ると、「しっかりとした事務所」という信頼感を与えることができます。また、それによって様々なメリットもあるのですが、実はそのようなデザインが集客にマイナスに働く可能性もあります。
そこで、大手感、高級感のあるホームページを作って、ある程度集客が軌道に乗ったときに起こりうる典型的なデメリットをいくつか紹介してみたいと思います。
個人事業主が問い合わせを躊躇する
ホームページから「大企業」「大きな事務所」をイメージする大手感が出過ぎていると、個人事業主や小規模事業者などが「こんな大きな事務所は個人相手の仕事はしないのでは」「私の相談先とは違うのでは」と感じ取ってしまい、問い合わせを躊躇してしまうことがあります。
特に、行政書士事務所を個人事業として開業する場合、行政書士側の「こんな人に依頼してもらいたい」との意図と、ホームページが対象とする層のズレが大きくなりますから、事務所運営を軌道に乗せにくい要因として働く可能性があり、注意を要します。
質問電話の増加
行政書士のホームページに大手感を出すことによって「ここは大きな事務所だ」という印象を与え、「大人数でやってるようだし丁寧に対応してもらえるだろう」ということで、ちょっとした質問や役所に問い合わせづらい質問の電話が増えてしまうことがあります。
実際にスタッフさんを雇用するなど大人数で対応していて、相談対応の人員にも余裕があるのなら別ですが、個人もしくは少数で業務をしている行政書士事務所では、大手感のあるホームページでは質問電話への対応もそれなりの負担になります。
対応エリア外からの問い合わせ
行政書士のホームページに大手感を持たせることで生じる問題には、「ここは大きそうだから遠くても対応してくれるかな」と考えて、対応エリア外からの問い合わせが増えるという問題もあります。
ホームページ上で告知している業務が全国対応可能であるなど、もとから広いエリアを対象としているのであれば問題ないのですが(むしろ大歓迎の事態でしょう)、そうでなければ問い合わせ対応が余計な負担になる可能性があります。
高難易度案件の増加
ホームページ上で大手事務所というイメージを打ち出していると「難易度の高い案件にも実績があるだろう」と思われて、高難易度案件の相談比重が高まる可能性があります。
それ自体は悪いことではないのですが、行政書士事務所開業直後の業務知識・経験が乏しい状態でそのような案件が増えてしまうと、負担感が大きくなってしまう危険があります。
大型案件の増加
大手感の強い行政書士のホームページは、大規模な事業者からの案件が増えるケースも考えられます。
これも悪いことではありませんし、むしろ行政書士として狙って行きたいターゲットではあるのですが、顧客の規模が大きくなればなるほど様々な意思決定や書類収集などに時間がかかる傾向があります。
そのため受任から業務完了までの時間が長くなりやすく、かつ業務のボリュームも大きいため、行政書士事務所開業当初の資金繰りが厳しい時期だと事務所の経営上かなり苦しい面が出てきます。
目的を持ってデザインを決める
上記で挙げたデメリットは、ある側面から見ればメリットにもなりますが、意図せずにそれが起きたときには大きなデメリットになってしまいます。
つまり、ホームページは「綺麗なホームページ」だから依頼が入る、「綺麗なホームページだから効果が大きい」わけではないのです。
どのようなホームページにするかということは、行政書士事務所としての経営方針やブランディングの方向性、ホームページにアクセスする訪問者の傾向によって決めるべきです。
依頼の少ない大手感のある綺麗なホームページを、少しダサくて隙のあるデザインに変えたところ、受任件数が大きく上がったというケースも実際にあります。
「見た目が好み」「せっかくなら格好いいホームページが欲しい」という理由で決めてしまうと、それだけでホームページを作って公開する意味を覆してしまう危険もあるため、何のために、誰を対象としてホームページを作るのかに立ち戻った検討が大事です。
開業前後にホームページを制作業者へ依頼するとき
なお、行政書士事務所の開業前後でホームページを制作業者に依頼する場合、上で触れた「見栄え」と「対象とする依頼者」のバランスを念頭に進めるようにしてください。
ホームページ制作業者が、行政書士の顧客を見ながら作ってくれるところならよいのですが、そうではなく直接のクライアントである行政書士の満足度ばかりを気にしてデザインを出してくるようなところだと、十分な検討のないままに大手感のあるホームページが出来上がってしまうことが往々にしてあります。
見栄え良く仕上げるぶんコストが余計にかかり、実際に稼働し始めると想定外の相談が多く翻弄されるというのでは、開業前後の事務所運営が大きく揺さぶられてしまいます。
デザインについては最低限のラインを超えていればよいと割り切って、まずは他の事務所と同じ土俵に登れるところまで、ホームページ内の記事の充実などに注力するというのも有効です。