Q. 行政書士試験合格者です。行政書士事務所を開業したいと考えているのですが、実務はどのようにして学べばいいのでしょうか?
A. 専門書を読む、行政書士会や民間が開催している行政書士実務セミナーに参加する、行政書士事務所で働くなどの方法があると思います。
行政書士事務所の開業を目指す方へ—実務を学ぶ方法と成功の秘訣
行政書士試験に合格し、これから行政書士事務所を開業しようと考えている方にとって、実務をどのように学ぶかは非常に重要なテーマです。「1万時間の法則」をご存知でしょうか?ある分野の一流になるには1万時間の稼働が必要だと言われています。本記事では、1万時間の質を高めて一流の行政書士になるための実務の習得方法について解説します。
1.専門書を読む
古典的な方法ではありますが、行政書士業務について書かれている専門書を読むことで、実務を学ぶことができます。オンライン書店が普及する前は、専門書が充実しているターミナル駅にある大規模書店に出向かないと専門書は手に入りませんでした。しかしながら、最近はAmazonなどのオンライン書店が普及したため、地域を問わずに専門書を手に入れることができるようになりました。
オンライン書店の場合は、実物を手によって試し読みができないのが難点です。著者が行政書士の場合は、著者名をインターネット上で検索し、その行政書士事務所のホームページを確認して業歴や実績を確認したり、レビューを確認することで、その専門書が有益がどうかの判断の材料にすることができるでしょう。もし、レビューに「基本的なことしか書いていない」という場合は、これから行政書士実務を学ぶ方にとっては良著かもしれません。専門としたい業務が決まっている場合は、行政書士業務に関する書籍以外にも、専門としたい業界の方が読まれる書籍も読むことで、業界を深掘りすることができます。
2.行政書士会の研修を活用する
行政書士登録を行うと行政書士会が主催する業務研修会に参加することが可能です。日本行政書士連合会の中央研修所では、様々な分野の業務研修をインターネット上で受講することができます。ビデオ・オン・デマンド(VOD)タイプの配信のため、自分の都合の良いときに受講することができます。講座内容によっては法改正前の情報が講義内容に含まれている点は注意が必要です。
自身が所属する都道府県の行政書士会(単位会)や支部でも、業務研修会を主催しています。単位会や支部の研修は、オンラインではなく対面で開催されるものもあります。対面の場合は、先輩行政書士や開業同期行政書士と接点をもてる絶好の機会です。特に先輩行政書士とは、今後、案件で困ったときに相談できる相手になることもあります。頼りになる先輩行政書士と知り合いになれる対面の業務研修会には、積極的に参加した方がよいでしょう。
3.民間のセミナーを活用する
インターネット上で「行政書士 実務セミナー」で検索するとさまざまな個人・団体が運営している実務セミナーを紹介するページが表示されます。専門とした分野が決まっている場合は、「行政書士 実務セミナー 〇〇(専門分野)」で検索すると、業務特化型の実務セミナーを検索することができます。実務セミナーを選ぶ際は、業務の全体像や営業方法を学べる講座が有益なものだと考えます。
セミナーの中には、書類の書き方を教えるだけのものや、行政機関が公開している手引きを読むだけのものもあります。民間のセミナーはピンキリのため、受講を検討する際は慎重な検討が必要だと言えるでしょう。
民間のセミナーを選ぶ際の基準は、講師の質が重要です。
セミナー講師としての実績ではなく、行政書士実務や行政書士事務所経営での実績が重要です。講師が行政書士の場合は、インターネット上でその行政書士が所属している行政書士事務所のホームページを確認したり、書籍を執筆している場合は、レビューを確認するなどして、登壇する行政書士の実力を確認してみましょう。
民間のセミナーでは本セミナーの前に、無料や安価な受講料で参加できるプレセミナーを開催していることがあります。それに参加することで、講師や受講者の雰囲気を確認して、セミナー受講を検討するのもよいでしょう。勢いだけで、高額の民間セミナーを申込むことは止めましょう。そして、セミナー受講後に、実務をしていてわからないことが出てきた際に講師に質問できるセミナーであるかどうかも、民間のセミナーを選ぶ基準になります。
4.行政書士事務所で働く
最も実践的で確実な方法は、既存の行政書士事務所で働くことです。先輩行政書士のもとで仕事の流れを学びながら、実際の案件に触れることで、書類作成や手続きのノウハウ、お客様や行政機関への対応スキルを身につけることができます。
行政書士事務所で実務積むために働く具体的メリット
リアルな業務経験を得られる:実際の案件を通じて、理論だけでは分からない実務のポイントや注意点を学ぶことができます。
効率的なスキルアップ:初めての案件でも、経験豊富な先輩行政書士のサポートがあるため、効率的にスキルを磨けます。
行政機関やクライアント対応スキルの習得:業務の中で、行政機関やお客様とのコミュニケーションやトラブル対応のノウハウを学べます。
行政書士事務所で修行することは行政書士開業予定者にとってメリットがあります。
とはいえ、既存の行政書士事務所は、新人行政書士を育成するための機関ではないことは忘れてはいけません。在職中は、勤務先である行政書士事務所の利益を優先し、その業務方針に従う必要が求められます。また、業務中に得た情報を外部で利用することは、守秘義務に違反する可能性があるため注意が必要でしょう。
開業予定者にとって行政書士事務所での勤務経験は非常に貴重ですが、在職中の姿勢や学び方次第で、その価値が大きく変わります。成長の機会を活かすためには、勤務先行政書士事務所の業務方針に従いながら、自ら進んで行動し、学び続ける姿勢が鍵となります。