【専門家インタビュー】行政書士の独立開業、ホームページは「自作」か「外注」か? 成功へのロードマップ

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行政書士として独立開業する際、多くの人が直面するのが「ウェブサイトをどう作るか」という課題です。制作会社に立派なサイトを依頼すべきか、まずは無料サービスで自作すべきか。この最初の選択が、後の集客やブランディングを大きく左右します。今回は、士業のウェブマーケティングに精通するジェノモス代表の岩本ユウゴさんから、開業時に失敗しないホームページ制作の進め方について、詳しくお話を伺いました。

行政書士事務所の経営方針は固まっているのか?

──本日はよろしくお願いします。行政書士として開業する際、ホームページをどうするかは最初の大きな悩みだと思います。いきなり制作会社に立派なものを依頼すべきか、それともWixやジンドゥーのような無料サービスで小さく始めるべきか、岩本さんはどうお考えですか?

岩本:はい、よろしくお願いします。これは毎年何度もいただくご質問ですが、実は「こちらが絶対に正解」という単一の答えはありません。ただ、判断基準として最も重要なことがひとつあります。

──最も重要な判断基準、ですか?

岩本:それは、「事務所の経営方針がどれだけ明確になっているか」です。

──経営方針、というと具体的には?

岩本:例えば、「どの業務を主力としていくのか」「主な顧客層(ターゲット)は誰なのか」、そして「事務所としてどのような印象を与えたいのか」といった、いわゆるブランディングの核となる部分ですね。

──なるほど。その方針が固まっているかどうかで、ホームページへのアプローチが変わってくるわけですね。

岩本:そうですね。もし、これらの方向性が明確で、「自分は建設業界をサポートしていきたい」「相続分野でこのようなお客さまの助けになりたい」という強い意志と戦略があるなら、早い段階でプロの制作会社に依頼するのも有効な戦略です。プロに依頼すれば、そのビジョンを正確にヒアリングして、視覚的にも信頼感のあるサイトを構築してもらえます。

──では逆に、まだ方針が固まっていない場合はどうでしょう?

岩本:開業したばかりで、まだ業務の方向性も手探りだ、という状況であれば、いきなり高額な費用をかけて外注するのは時期が早いと思います。

──というと、まずは自分で作ってみるのが良い、ということでしょうか。

岩本:はい。意外に思われるかもしれませんが、悪戦苦闘しながらでもご自身でホームページを作ってみるという行為は、実は経営方針を固める上で非常に有益な作業になりえます。

──有益な作業、ですか? ホームページ作りが、ですか?

岩本:ええ。例えば極端な例かもしれませんが、「建設業許可」について専門的な記事を書こうとしても、競合が強すぎて筆が止まってしまう。でも「古物商許可」についてならスラスラ書ける、といった経験を通じて「自分はこっちの業務の方が知識もあり、情熱を持って取り組めるかもしれない」という“気づき”が得られることも多いです。これは、外注して「お任せします」と言ってしまうと難しい、貴重な自己分析の機会になります。

どの無料サービスを利用すべきか

──いざ自分で作ってみようと思った時、今はたくさんの無料サービスがあって迷ってしまいます。Wix(ウィックス)やジンドゥー(Jimdo)、あるいは最近だとSTUDIO(スタジオ)なども聞きますが、選ぶポイントはありますか?

岩本:確かに、ここ数年でツールは着実に進化していますし、選択肢も豊富になりました。ジンドゥーは以前からあり、初心者でも扱いやすく日本語のサポート情報も多いのが特徴です。Wixはドラッグ&ドロップで直感的にデザインできる自由度の高さが世界的に人気ですね。STUDIOは、かなりスタイリッシュでデザイン性の高いサイトが作れるので、見た目を重視する方に向いていると思います。

──それぞれ特徴があるんですね。行政書士の方が初めて使う場合、デザイン性で選ぶべきか、簡単さで選ぶべきか…悩みますね。

岩本:どのサービスがどんな機能を有しているのか、逆に不得手としているのか、機能面での違いはありますが、私はいつも「困ったときに情報を探しやすいサービスを選ぶ」とお伝えしています。

──情報が探しやすい、ですか?

岩本:はい。ホームページ作成は、どれだけ簡単なツールを使っても必ずどこかで詰まります。「この画像のサイズを変えたい」「お問い合わせフォームをここに設置したい」といった具体的な問題に直面したとき、Google検索や書店のガイドブックで、すぐに解決策が見つかると時間を無駄にしなくて済みますよね。

この点でいえば、やはり利用者が多いサービス、例えばジンドゥーなどは日本語の情報が見つけやすく、結果的に挫折しにくいというメリットがありますね。

独自ドメインは取っておこう

──なるほど。利用者数の多さも選定基準になるんですね。では、無料サービスで始める場合、他に注意点はありますか?

岩本:できるかぎり実行してほしいのは、たとえ無料サービスで小規模にスタートする場合でも、「独自ドメイン」を取得しておくことです。

──独自ドメイン、というと、「wix.com/〜」のようなサービス名が入るURLではなく、「your-office.jp」のようなオリジナルのURLのことですね。無料プランだと使えないことも多く、月額数百円などの有料プランにする必要があったりしませんか?

岩本:おっしゃる通り、多くの無料プランでは使えず、有料プランへのアップグレードが必要になるケースがほとんどです。ですが、その月額数百円~千円程度の費用を上回るだけのメリットがあります。

──それほどのメリットですか!ぜひ具体的に教えていただけますか?

岩本:大きな理由は3つあります。まず、検索エンジンの評価です。

検索エンジンは“ドメインの歴史”を見ている

岩本:Googleなどの検索エンジンは、そのドメインがいつから存在し、運用されているか、つまり「ドメインの歴史(ドメインエイジ)」を評価の対象にしています。

──長く使われているドメインほど、検索エンジンから信頼されやすいということですか?

岩本:もちろんドメインの歴史が長ければそれだけで評価されるというわけではありませんが、ざっくり言ってしまうならそういう傾向はあります。ですから、ドメインは時間とともに価値が育っていく「資産」のイメージでとらえることができます。「いずれ本格的に運用するから今は無料URLでいいや」と考えていると、その「いずれ」の時にゼロからのスタートになってしまいます。開業と同時にドメインを取得しておけば、それだけ早く資産形成を始められるわけです。

──なるほど…。極端な話、開業準備中でサイトがまだ完成していなくても、ドメインだけは先に取っておくべきなんですね。

岩本:そのほうがよいと思います。そして二つ目の理由ですが、将来の「引っ越し」の容易さです。

将来的な“引っ越し”でもドメインを変えずに済む

岩本:例えば、最初は無料サービスで始めたけれど、事業が軌道に乗ったのでWordPress(ワードプレス)などで本格的なサイトに移行したい、あるいは制作会社にリニューアルを依頼したい、というケースは非常に多いです。

──確かに、事業が成長すればサイトもステップアップさせたくなりますね。

岩本:そのとき、もしサービスの無料URL(サブドメインと言います)を使っていたら、サイト移行と同時にURLも全く新しいものに変わってしまいます。でも、独自ドメインを使っていれば、中身のシステムやデザインを総入れ替えしても、URL(アドレス)は変えずに済みますよね。

──あ!それはすごく重要ですね。名刺やパンフレット、チラシに記載したURLを全部刷り直さなくてもいいわけですし、お客様を混乱させませんね。

岩本:はい。実務上の手間やコスト削減はもちろん、お客様からの信用という面でもロスを最小限に抑えられます。過去に、「無料URLで運用していたサイトが軌道に乗ったのに、リニューアルでURLが変わってお客様が来られなくなった」という悲しい事例もありました。

──そして、三つ目の理由は?

岩本:それが、集客面でのインパクト、つまりSEOへの影響です。

集客面でのインパクトも小さくない

岩本:もしドメインを変更してしまうと、SEOの観点で非常に大きなデメリットが生じます。

──SEOというと、検索エンジン最適化、つまりGoogleなどで検索した時に上位に表示させる対策のことですね。

岩本:ええ。せっかく時間をかけて記事を書き、Googleに評価されて検索結果に表示されるようになったページも、ドメインを変えた瞬間にその評価は相当程度リセットされてしまいます。

──ええっ!リセットですか!? せっかく育てたのに…。

岩本:はい。技術的に「301リダイレクト」という評価を引き継ぐ設定もありますが、知識のある方でないと設定が難しい可能性も高く、またリダイレクトを使っても100%評価が引き継がれる保証もありません。基本的には、新しいドメインで再びゼロから評価を積み上げ直す必要がある、とイメージしていただくほうがよいと思います。サイトをリニューアルしたら検索流入が激減した、という悲劇は、このドメイン変更が原因であることが多いんです。

──それは絶対に避けたい事態ですね…。

岩本:独自ドメインは事務所の「看板」であり「住所」です。開業と同時に取得し、大切に育てていくことをおすすめします。

まとめ:まずは「自分で作る」経験が、将来の資産になる

──よく分かりました。開業時はやることが多くて、「とりあえずホームページも作らなきゃ」と焦ってしまいがちですが、しっかり戦略を持って臨む必要があるんですね。

岩本:そうですね。行政書士事務所のホームページには、「集客したい」「信頼性を高めたい」「業務内容を正確に伝えたい」など、本来は何らかの目的があるはずです。ですが、開業前後の慌ただしさの中で、その目的が曖昧なまま「とりあえず作る」というケースも少なくありません。

──確かに「周りも作っているから」とか「ホームページくらい無いとまずいから」という理由で進めてしまいそうです。

岩本:そういう心理状態で、タイミングよくかかってきた営業の電話や訪問営業の言うままに、「今なら安くできますよ」「リース契約でお得です」「毎月○○円しかかかりません」といった言葉を信じて高額な契約を即決してしまい、後で後悔するケースは本当に後を絶ちません。

──うわ、それは怖いですね…。開業時は特に判断力が鈍りそうです。

岩本:ええ。ですから私からの最後のアドバイスとしては、やはり、まずは無料や安価なサービスを利用して、一度ご自身で作ってみることをおすすめします。

──それが、経営方針の明確化にもつながる、というお話でしたね。

岩本:はい。ご自身で悩み、手を動かして作った経験は、たとえそのサイトが最終形にならなかったとしても、将来的に業者に外注する際に「何を」「どうして欲しいのか」を明確に伝えるための「解像度」を格段に上げてくれます。

──なるほど。「丸投げ」するのではなく、自分の言葉で的確に指示が出せるようになるわけですね。

岩本:そうですね。その経験が、無駄な出費を避け、本当に成果の出るホームページを育てるための大きな助けになります。まずは独自ドメインを取得して、小さな一歩から始めてみてください。

──非常に実践的で、勇気の出るお話をありがとうございました。

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