元&現役行政書士であるGenomosメンバーが座談会形式で語るGenomos座談会の第3回になる今回は、行政書士事務所を経営していて起こる様々な出来事についてどう対応したらいいのかについて語ってみようと思います。
Genomos代表、士業向けウェブ制作会社風デザイン株式会社代表。元行政書士。
Genomos経営コンサルティング担当。行政書士法人シグマ代表社員。
Genomos所属。行政書士法人シグマ代表社員。
相性が悪そうな人への対応
行政書士事務所を経営していると、「他の人はこういうときどうしてるんだろう?」と考えることも多いと思います。
そんなわけでまずは、先日話題になったYoutube動画(怖いお客さんとのトラブルについての動画)からテーマを拝借して、ちょっと怖そうな人など、相性が悪そうな人からの問い合わせにどう対応するかという点について話してみようと思います。
これ岩本さんは行政書士事務所運営していた頃ってどうしてましたか?
この問題は、とにかく予防が大事ですよね。来てしまってから対処するのは大変なので。
この点、私は9割以上がホームページからのご依頼だったので、ホームページから問い合わせてくれる人の層をどう交通整理していくか、どんな人が問い合わせてくれるように作るべきかという点に非常に力を入れていました。
予防できるのが最善ですよね。
と言ってもイレギュラーでそういった人から問い合わせが入ってしまうということもあるとは思うんですが、そういうときはどう対応していました?
「なんか変だな」という感覚って、ほぼ当たりますよね。「なんか変だと思ったけど、実際は変じゃなかった」っていうほうが相当稀で。なので、私は相談の段階でもおかしな雰囲気を感じたら、極力受任しないようにしていました。
というか、思い返せばむしろ全ての案件を極力受けないようなスタンスで対応していた、と言っても過言ではないかも(笑)。言い方がおかしいので換言すると、どんな些細な案件でも一歩、二歩引いた場所からかなり俯瞰的に見るスタンスでした。それが結局、危険に近寄らない秘訣にもなっていたかなと思います。
これ、行政書士を開業して日の浅い人が特に陥りやすい罠かもしれないのですが、「せっかくもらった数少ない相談だから無駄にしたくない」の意識が強すぎると、怪しい話に自ら関わってしまう事態に陥りやすいですよね。
そういう意味で、余裕を持った開業資金はトラブルに巻き込まれない意味でも非常に大事だなということは言えますね。
「なんか変だな」という感覚が当たるというのはすごく良くわかります。
売上優先でそういう違和感を見て見ぬ振りすると、必ずと言っていいくらいにトラブルが起きますよね。
この辺の感覚含めて、怖そうな人や、相性が悪そうな人からの問い合わせの対処というのは、阪本さんはどう考えていますか?
普段から阪本さんとこういった話をしているので白々しい感じではありますが(笑)
うーん、白々しい(笑)。毎週月曜日のシグマ経営会議で話しているテーマですよね、これ。
シグマのホームページは岩本さんのDNAが刻み込まれているので、ホームページからの問合せでは、上から目線の偉そうな方や相性が悪そう方からの問合せが少ないかな。
でも、少ないゆえに、何かの間違いでそういう属性の方からの相談が入ると逆に目立つのですぐに警戒スイッチが入ります。
私も皆さんと一緒で、「なんか変だな」という違和感はあたるので、こちらからいくつか質問を投げかけてみて、許可要件を満たしていなければ相談だけで終わらせるし、違法な申請方法を求めてきたら、「それは出来ません」と言って相談を切り上げています。
こちらからの質問に明確に答えないで一方的に話す方や、面談のアポや申請を急かせる方は、要注意だと思います。
なんでそんなに急ぐのかをヒアリングしてみて、違和感があったら、そこで終わりにしますね。
判断はなるべく早い段階でしておきたいですね。
流れのままにズルズル行ってしまって、万が一違法行為に手を貸してしまったなんてことになったら、一発で商売できなくなっちゃうかもしれませんから。
ちなみにこの手の話題だと受任義務はどうなんだと気になる人もいると思いますが、現実には、例えば「1週間で申請してくれるなら依頼したい。」→「無理です。」→「じゃあ依頼する。」って話にはならないですから、依頼されるとこまで行きませんしね。
さて、ここで少し話題を変えたいんですけど、さきほど岩本さんから「ホームページからどんな人が問い合わせてくれるように作るべきかという点に力を入れていた」という話がありました。
で、Twitterとかを見ていると、「ウェブからの集客は客筋が悪いが紹介は良い」と言っている人と、「紹介からの集客は客筋が悪いがウェブは良い」と言っている人が両方いるんですよ。
結論わかってて聞くんですが(笑)、この点は岩本さんはどう思いますか?
紹介vsホームページ
はい、振っていただいてありがとうざいます(笑)。圧倒的に「ウェブからの依頼のほうが客筋が良い」と思っています。
そしてこの問題については、こうも考えています。まず、とりあえずでホームページから依頼を受けている人、これは紹介よりも客筋が悪い可能性があります。なぜなら、全くといってよいほど客層を自分とマッチさせるフィルターをかけていないため、どんな人が相談してくれるか、依頼してくれるかというのは運任せになってしまうからです。
一方、紹介案件だと同業さんや他士業さんの人的フィルターが一応かかっていますし、同業さんや他士業さんの信用も借りて業務に取り組むことができるので、とりあえずでホームページから受任するという場合よりも客筋がまとも、業務の進行もスムーズになりますよね。
この段階から見ると、確かにウェブより紹介という意見も分からなくはありません。
でも、でもですよ。この「紹介案件のほうが客筋が良い」と思っている人は、ウェブにはもっと凄い世界が広がっていることを知らないですよね。ホームページを調整していくと、圧倒的に良いお客さん、事務所が依頼して欲しいと思うお客さんからしかほとんど依頼が入らない状況を作り上げることができるじゃないですか。
これを知ってしまうと、とてもじゃないけど「ウェブは客層が悪い」「紹介案件のほうが安心」とは言えません。
やはりホームページ経由のほうが、間に「紹介してくれる人」が介在しない分、自分たちでコントロールしやすい気がします。
もしかすると我々が知らないだけで「紹介にも凄い世界が広がっている」のかもしれませんが。
阪本さんの周りには紹介を中心に上手に集客されている行政書士さんもいるのではと思うのですが、そういった方々というのは、紹介であっても望ましいお客さんからの依頼を集められるような形になっているのでしょうか?
どうなんでしょうね。
紹介だとウェブのようにフィルターをかけることが難しいので、望ましくないお客様からの依頼はどうしても避けられないと思いますよ。よくお会いする行政書士さんからも、「対応に苦慮している案件がある」という話を伺う機会がありますし。
私自身も紹介案件は、ウェブからお問合せ頂いたお客様より、ストレスがかかるときがあります。紹介者の面子を潰さないように、気を使う必要がありますからね。
やはり紹介者の方にも気を使いますか?
とても気を使いますね。
ご紹介頂いたお客様に対して失礼があったら、紹介者から怒られないか怯えたり、紹介者の方の期待に応えられないと次はないというプレッシャーを感じます。
私もそうですが、「組織のしがらみ」が嫌になって行政書士として独立自営の人生を選択した先生方は多いと思うのですが、紹介で集客すると、自らしがらみの世界へ飛び込んでいくことになりますよね。
2021年は私の行政書士業界10周年イヤーなのですが、10年目にして、この矛盾を知ってしまいました。
そうなんですよね。
もちろん、依頼者に対しては紹介案件であろうとWEB案件であろうと適切な対応が求められるわけですが、関わってくる人数が多いほど、しがらみ、人間関係で生じる「対依頼者以外の問題」は色々と増えていきますよね。
そしてなにより、紹介案件は自分で構築したフィルターではないところから案件がやってくるので、客層が絞れないところに難しさを感じました。
件の動画では後半でチラッと「ウェブからだと誰が来るかわからない」的に仰ってましたが、私の経験では、怖い系、困った系のお客さんは、圧倒的に誰かの紹介から「これ、行政書士の案件だよね?」の振りでやってくるケースが多かったです。
ホームページはしっかり作り込むと、もちろん例外は出てくるにせよ、どのような人から問い合わせが入るかをコントロールしやすい点と、対応にあたって紹介者の顔色を伺う必要がないところが大きなメリットですね。
そうは言っても他にも地域によっては士業や自営業者の横のつながりが強くて、紹介を受けていかないとやりにくいエリアなどもあるでしょうし、性格的に幅広いお客さんに対応するのは全然苦じゃないという人や、人の輪の中でコミュニケーションを取るのが好きな人であれば紹介でやっていくというのもそれほど大きな問題にはならないのかもしれません。
我々はウェブ集客派なので、3人で話すとどうしても紹介よりウェブだという結論になってしまいますから、「いや、紹介だってしっかりフィルターをかける方法はあるんだよ」という人がいれば、お話聞けたら面白そうですね。
(座談会第4回に続く)