Q. 行政書士で開業予定です。「いまどきホームページが無いと仕事にならない」といった話も耳にするので、これからホームページを作りたいと考えています。でも、行政書士としてはどんなホームページを作ればいいのでしょうか?
A.どのようなフローで依頼につなげるかによって、作るべきホームページは変わります。大まかには、紹介など人的なつながりを増やした後に見てもらう事務所自体のホームページ(コーポレートサイト)と、WEBから直接に依頼につなげるための業務特化型のホームページの2つに分かれますので、事務所の運営の仕方によって作るべきホームページをどちらにするか決めるとよいでしょう。
事務所のホームページは終盤の「安心提供」
「行政書士のホームページ」と聞いてまず思い浮かぶのは、取扱業務や事務所の概要、料金一覧やアクセス、スタッフ紹介などの載っている事務所のホームページ(いわゆるコーポレートサイト)ではないでしょうか。
このタイプのホームページは原則、それ自体から依頼につなげるというよりも、別の手段や方法で獲得した見込み客に対して「こんな事務所です」「こんな代表者がやってます」といった事務所の情報を見せることによって、安心を与えて電話やメールといったアクションにつなげる用途で用います。
案件が紹介されるケースでは、たとえば他士業の方が「この行政書士さんに相談してみるといいよ」とクライアントや相談者に教えるときにホームページURLを伝えたり、同様に、別の業務を専門とする同業の行政書士の方が「うちでは扱っていないので、こちらの行政書士さんに相談してみては」など案内するときにホームページのURLを伝えたりするときにホームページが役立ちます。
また、行政書士としてセミナーや相談会などを開催した場合、そこに集まってくれた方々に対してURL入りの名刺やパンフレットを渡すことで、後日、参加者があらためてホームページを見て相談の問い合わせをするフローが形成されることもあります。
さらに、上の2つとは少し意味合いが違いますが、次に紹介する業務特化型のホームページを見て「この事務所に相談してみようか」と思った会社の担当者が、「念のため事務所自体のホームページも確認しておこう」という用途で訪問するケースもよくあります(これはBtoB的な業務の場合に起こりやすいです)。
業務特化型は事務所のWEB出張所
他方、1つの業務に対する情報提供や業務案内を行う業務特化型のホームページは、そのホームページ自体が事務所のWEB上の出張所ともいえる存在で、ホームページに訪問した人を接客・応対して疑問に答え、「相談します」「依頼します」というアクションを引き出す役割を担うのが特徴です。
業務特化型のホームページはWEBから直接の相談や依頼を目的として運用するものですが、そこに人を呼ぶためには検索結果に表示される広告を出すか、またはその業務に関する情報を更新してページを増やしていくか、いずれか(または双方)の施策が求められます。
もちろん、業務特化型ホームページがWEB上に浸透することによって、事務所総合型のホームページと同様、他士業さんの元に「○○に対して相談できる人はいないか」などの相談が入った際、他士業さんがWEBを調べてたどり着き「この事務所に相談してみては」といった使い方がなされることもあります。ですが、このルートはどちらかというと副次的です。
また、同業の行政書士さんが実務で分からないことがあってWEBで調べ物をする際、公開している業務特化型のホームページが何度もヒットすることがあれば「この業務はこの事務所が強い」というイメージを形成してくれるため、同業者さんからの紹介が(後日)増えていく面もあります。こちらも副次的な要素です。
どちらのルートを予定するかによって作るホームページも変わる
以上から、2つのホームページは主な用途が大きくことなるため、どういったホームページを作るべきなのかについては、どういったルートで依頼につなげる予定なのか、その計画によって変わってくることになります。
事務所ホームページをつくるべき人
いろいろな交流会に出たり、地域の他士業さんの事務所訪問をしたり、セミナーや相談会に参加するなど、リアルでの人のつながりを広げていく計画が当面の事務所運営の幹となるのであれば、作るべきホームページは事務所自体のホームページ(コーポレートサイト)になります。
事務所のホームページはイメージしやすため、何か綺麗なテンプレートを購入するなどして、自作する方法でも構築しやすいです。また、どんなホームページ制作業者に依頼しても、事務所のホームページであればできあがったものが用途に合わないケースは稀なため、予算の都合に合わせてフィーリングの会う制作会社に相談・依頼するのもよいでしょう。
さらに言えば、事務所のホームページは「わたしはこんな人です」を伝える意味も大きいため、極論、自分の好きな色やデザインで作るのも有りです。
業務特化型ホームページをつくるべき人
逆に、交流会や事務所訪問などを不得手・あまり好きではないと感じるとか、WEBの知識がある程度あるためWEBから依頼してもらう流れのイメージをつかみやすい等の理由があるのなら、WEBから直接に相談・依頼の入る業務特化型のホームページを作り込んでいくほうが相談や依頼につながる可能性は高まるでしょう。
もっとも、業務特化型のホームページは前述のように「事務所のWEB上の出張所」として作るものですから、一朝一夕に作り上げられるものではありません。業務に関連する情報の提供を通じて、接客応対や自分の人柄まで文章から感じ取ってもらえるように、いろいろなタイプのコンテンツを丁寧に用意していく必要があります。
業務特化型のホームページは、ホームページ制作業者の側にイメージが無いケースが多いので(集客型です!と謳っていても事務所のコーポレートサイトであることも多いので)、制作を依頼できる業者を探すのは結構難しくなります。
また、業務特化型のホームページは「相談者・依頼者のためのもの」であることを念頭に構成や色味を検討しなければならないため、「わたしはこんな色が好き」「こういう雰囲気が好み」という行政書士さん側の都合は考慮せず作らないと失敗しやすい点には注意してください。
両方同時に進行するのは難しい
これから行政書士として開業する人の中には、業務特化型のホームページを構築しながら、合間、合間で交流会に参加したり他士業さんの事務所訪問をしたり(あるいはセミナーを行ったり)して、人と人とのつながりを作りながらWEB上にも広がりをもたせていきたいと思われる方も多いと思います。
ですが(これは実際にやってみるとわかりますが)2つを両立させることは結構難しいです。行政書士として開業する以前からホームページに人を集めることがどういうことなのかイメージできている人なら可能性はありますが、そうではないケースでは、大抵の場合、ホームページの作り込みよりも他者と会うことに充実感や達成感を感じやすく、ホームページは「ついで」「時間があれば」というサブの存在に位置づけられてしまうためです。
これは、立ち上げ当初のホームページにはアクセスすらほとんど無いこと、仮にあったとしても問い合わせのメールや電話につながりにくいことから「意味のある作業」に感じられにくいのが大きな要因でしょう。
並行して取り組んでいくなら、手間暇が一方に偏っていないか、かける時間配分をよく検討するようにしてください。
自分の想定するルートに合うホームページを作ろう
非常によく目にするケースでは、上で触れたように「人とのつながりを作りながら、同時にWEBからの相談・依頼も開拓していこう」と考えて一生懸命ホームページに記事を公開するものの、そのホームページが実は事務所型(コーポレート型)であり、WEBから直接の依頼獲得には適さないという組み合わせがあります。
もともと紹介など人とのつながりを前提とする事務所総合型のホームページに、WEBから直接依頼されることを願って記事を公開していっても、そもそもの目的や作りが異なるため効果が出るまで余計に時間がかかってしまったり、場合によっては全く結果につながらずかけた労力の無駄になってしまう可能性があります。
まとめ
人と人とのつながりを前提に、ホームページはその過程や最終段階で確認してもらう用途として使用するのであれば、事務所総合型のコーポレートサイトを作りましょう。
逆に、WEBから行政書士さんや事務所の存在を知ってもらい、WEB上で直接に相談・依頼までつなげていくのであれば、事務所総合型を作っても難易度を格段に上げるだけですので、当初から業務特化型で育てていくのがおすすめです。