行政書士事務所を経営していく中では、書類や資料など多くの情報を管理していかなければなりませんが、セキュリティと利便性がトレードオフの関係になる部分も多く、悩まれている方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、行政書士のデータ管理について考えてみたいと思います。
書類のバックアップ
行政書士事務所を開業した直後の方が意外と見落としがちなのが、提出する書類は必ず控えを作成し、可能な限り窓口で受理印を押してもらい、ある意味でのバックアップとして保有しておくという点です。
士業事務所などでの勤務経験がある方も含めて、控えの制作は実務の経験がある方にはあまりにも当たり前のことかもしれませんが、「書類を提出したけど、控えが手元に何もない」というのは、新人の行政書士には比較的起こりがちです。
何かしら書類を提出する場合には、提出したものとまったく同じものが手元に残るようにしましょう。
紙かデータか
前述の申請書類の控えなども含めて、行政書士事務所では書類や資料を紙ベースで保管するのか、データ(主にパソコンの記憶媒体)で保管するのかというのも問題になりやすい点です。
行政書士の業務上、多くの書類や資料は、どこかのタイミングで紙の状態になることがほとんどですので、紙の状態で鍵付きのキャビネットなどで保管するというのはひとつの方法です。
ただ、紙だと場所を取りますし、保管している事務所外からは参照できない、原本を紛失してしまうと取り戻しようがない、といったデメリットがあります。
データで保管する場合のメリット・デメリット
一方、書類をスキャンするなどしてデータで保管する場合には、スペースの問題は生じませんので、バックアップも用意しやすいのですが、セキュリティ面の問題が生じてきます。
セキュリティを重視して、インターネットに接続していないサーバーにデータを保存して、事務所内のみで参照できるようにするという方法もありますが、この場合にも事務所内でしか参照できないという点は解消されません。
これを解消するためにクラウドサービスを利用する方法もありますが、セキュリティ面においては、オフラインでの運用に比べれば脆弱な面は否めません。
データを持ち運ぶ際のセキュリティ
また、最近ではPCやUSBメモリー、SDカード等に情報を保存したまま、持ち歩いて出先で打ち合わせや作業を進める機会も多いかと思います。
書類と比較して、USBメモリーなどの記憶デバイスは紛失や破損のリスクが高まります。
モバイルを考慮した場合、PCやUSBメモリーの暗号化やバックアップなどにも、念のため気を配っておくほうがよいでしょう。
案件管理、顧客管理
案件管理や顧客管理についても、並行して走る案件の少ない事務所であればどのような方法を採ってもそれほど問題にはなりにくいかもしれません。しかし、ある程度の案件を同時並行的に処理する事務所だと、この点がかなり大きな問題になってきます。
案件管理についても様々な手法があるとは思いますが、行政書士には事件簿の作成義務がありますので、案件管理の過程で事件簿も同時に作成できるようなものが望ましいでしょう。
このようなデータ管理については、Excelやkintoneなどのクラウドサービスが便利です。
前述のセキュリティなどの面も考慮しつつ、適したものを選択するのがよいのではないでしょうか。
まとめ
どのような方法を取っても、メリットデメリット、リスクの大小がありますので、「これが最適解」というものはありません。また行政書士事務所としての運営方針や規模、形態などによっても重視するものは変わってきます。
ただし、行政書士という仕事の性質上、比較的機密性の高い顧客情報を扱うことも多いので、最低限のセキュリティは考慮する必要があるのではないでしょうか。
仮に行政書士自身がクラウドやセキュリティ対策に詳しくても、スタッフが増えたときに運用方法が変わり、それらのノウハウがうまく伝達できないと、一気に事務所のセキュリティ意識が低下するリスクがあります。
そのため、行政書士一人の事務所においても、クラウド活用やセキュリティを考慮した運用については、何らかの指針とマニュアルを作成しておくほうがよいでしょう。