『企業化する士業と、勝者のメンタリティ』
出版社:金融ブックス
著者:佐藤 良雄、榊原 陸
日本屈指の士業グループ「SATOグループ」を率いる佐藤良雄氏の仕事の進め方と経営指針が分かるビジネス書。士業経営者にとって、令和の士業ビジネスの在り方や、事務所拡大の秘訣に示唆を得られる。 巻末付録には、特に示唆が得られる仕事の定義について抽出して掲載している。
https://www.kinyubooks.co.jp/shopdetail/000000000514/
阪本コメント
佐藤良雄氏が代表を務められているSATOグループさんは、個人的に、開業から社会保険労務士事務所だと思っていたのですが、1977年に行政書士事務所として開業されていたのにまず驚きました。
そして、士業事務所はビジネス色を出すと同業者から叩かれることがあるのですが、士業であっても一人の経営者として、新規顧客の開拓が代表者に課せられた役割であることが述べられています。
新規顧客の開拓のためには、代表者はハードワークをしなければなりません。とはいえ、闇雲にハードワークしてもそれは単なる消耗戦、自身(自事務所)の強みを理解して、正しい方向でのハードワークが必要だと言えるでしょう。
私の周りにいらっしゃる行政書士事務所の代表者の方々と情報交換するテーマとして、スタッフの採用と教育があります。
良い顧客と仕事をすること。だから経営者のもっとも重要な仕事のひとつは、良い顧客を獲得すること
P194より
WEB集客は質の悪い問合せしか来ないように思われているのが一般的のようですが、正しい方向で準備を進めれば、WEBからでも良い顧客を獲得することができます。そのかわり、顧客の悩みに寄り添った良質なページを準備しなければなりませんので、WEB集客の場面でもハードワークは大切だと言えるでしょう。
泉谷コメント
私は皆が褒めていると素直に褒める気になれない性格なので、やや斜に構えて読み始めたのですが、ゼロから日本最大クラスの士業グループを作り上げた佐藤氏の話に突っ込みを入れられる訳もなく、大きな組織を作り上げる人物の凄みというものを感じざるを得ません。
読後感としては、偉人の伝記を読んだときのそれに近いと感じました。
SATOグループが大きくなったときとは時代背景や社会環境は当然に違うわけですが、士業事務所の経営者であれば何かしら得るものはあると思いますので、それほど厚い本でもありませんし、読んで損はないのではないでしょうか。
個人的には、
これまでの顧客とはすでに信頼関係が築かれていますから、これから使う時間は将来の顧客を作るために使うべきです。
P.127より
の前後を読んでどう感じるかによって、どのような事務所を志向しているかの指標になるのではと思います。
岩本コメント
SATOグループの、というよりもそれを軸にして、社会保険労務士や行政書士に限らず大手士業事務所の様々な事業戦略や考え方が紹介されています。
事業規模の拡大を目指す行政書士だけでなく、対極にある一人事務所の行政書士にも、事務所のサービスを組み上げる際の様々なヒントを得られるのではないでしょうか。
クラウドサービス等によって士業事務所の周辺業務に様々な企業が進出したいま、士業事務所の企業化と、士業事務所ならではの専門性・安心感のバランスをどのように取っていくのか、悩まれている人には一つの指針としてに参考になるはずです。
専門的な技術や知識が一番ではなく、人間的な側面が第一。専門的知識は最後でいい。
P221より
顧客から信頼を得られる人材について言及されたこの記述は、ウェブサイトのページを作っていくときにもそのまま当てはまりますね。